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コラム

編集部
AFTER SUGIHARA SETSUZO KOTSUJI's AID TO JEWISH REFUGEES 命のバトンをつなぐ人々Part 3-1

2019-05-04

 3月27日、ロサンゼルスにあるサイモン・ウィーゼンタール・センターの寛容博物館で開催された「After Sugihara Setsuzo Kotsuji's Aid to Jewish Refugees」にて、ノートルダム清心女子大学教授の広瀬佳司氏と俳優の山田純大氏が講演を行った。

 1940年のリトアニアで、副領事だった杉原千畝が、2139のポーランド系ユダヤ人家族に発行した通過ビザが、“命のビザ”と換わった背景にはもう一人の人物、小辻節三の存在があった。

 なぜ、ユダヤ人たちは権力もないヘブライ語学者の小辻に、助けを求めたのか?また、小辻は、どのようにして、ユダヤ人難民を助けることができたのか?

 広瀬氏と山田氏の講演を振り返りながら、小辻の功績を紹介するパート3。


1932年頃の地図


 1917年のロシア革命直後、ハルビンではユダヤ人人口が増加し、極東最大のユダヤ人コミュニティが形成された。1932年、元清朝皇帝の愛新覚羅溥儀を元首とする満洲国が建国されたが、ユダヤ人協会はハルビンで活動を続けた。

 1934年、日産コンツェルン創始者の鮎川義介が、論文「ドイツ系ユダヤ人5万人の満洲移住計画について」を発表し、これを機に満州へのユダヤ人難民の移住計画が進められた。いわゆる「河豚計画」だ。

 当時の海軍大佐の犬塚惟重が「ユダヤ人の受け入れは日本にとって非常に有益だが、一歩間違えば破滅の引き金ともなりうる」と考え、計画の二面性を美味だが猛毒を持った「河豚料理」に喩えたそうだ。アメリカ人のラビで日本語研究家、マーヴィン・トケイヤーがこの移住計画について書いた著書の題名を、犬塚の喩えから取って『河豚計画(The Fugu Plan)』としたことから、この計画自体が「河豚計画」と呼ばれるようになったという。(ウィキペディアより)

 「河豚計画」には、「在支有力ユダヤ人の利用により米大統領およびその側近の極東政策を帝国に有利に転換させる具体的方策について」という題が付けられていた。ナチスからの迫害でヨーロッパを追われたユダヤ人に満州国への移住を促し、これによりアメリカ系ユダヤ人たちの資本を招き入れて日本を潤そうという計画だった。

 1938年4月に日本の外務省は、「回教及猶太(ユダヤ)問題委員会」設置し、同年12月には五相会議(内閣総理大臣・陸軍大臣・海軍大臣・大蔵大臣・外務大臣)を開き、「猶太人対策要綱」を決議した。

 このような状況下、当時の南満洲鉄道総裁、松岡洋右はユダヤ人の文化や習慣に詳しい小辻節三を満州のユダヤ人問題顧問として招聘した。

 講演の中で広瀬氏は、小辻の満州での2年間が、その後のユダヤ人難民の救出につながったと語った。

 満州駐在中、小辻は後に外務大臣となる松岡と親交を深め、信頼関係を築いた。また満州在住のユダヤ人コミュニティの人々とも交流を重ね、ヨーロッパのユダヤ人がナチス軍に迫害され、多くが安住の地を求めて難民になっている実情を知った。次第に小辻はユダヤ人たちに深く共感するようになった。

 1939年12月23日、第3回極東ユダヤ人大会がハルビンで開催され、日本人の小辻が聖書ヘブライ語で短いスピーチを行うと、会場にいたユダヤ人たちから大きな拍手が送られたそうだ。

 この時の様子について広瀬氏は、「その場にいたユダヤ人の大半が小辻のスピーチを理解しませんでした。なぜなら、ユダヤ人がメインに使う言語はイディッシュ語だけだったからです。一般のユダヤ人が聖書ヘブライ語を理解すると小辻が信じていたことに、私は大変驚きました」と語った。

 この広瀬氏の指摘はとても興味深い。つまり、第3回極東ユダヤ人大会の出席者は、小辻が何をスピーチしたか分からなかったにも関わらず、拍手喝采だったということだ。日本人が聖書ヘブライ語でスピーチしたことに、ユダヤ人は驚いたであろうし、迫害の酷さが増す状況下で聞いた小辻のスピーチはユダヤ人たちの心の琴線に触れ、また、とても心強く感じたのではないだろうか。

 その後、松岡は日本に帰国し、近衛文麿によって外務大臣に指名され、小辻も帰国して、ナチス軍の親衛隊が邦訳して発行した反ユダヤ主義のパンフレットや反ユダヤ主義のプロパガンダを否定するレクチャーを、日本各地で開催した。

講演をする広瀬桂司氏

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▶︎ 1
▶︎ 2-1
▶︎ 2-2
▶︎ 3-1
▶︎ 3-2
▶︎ 4-1
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▶︎ 4-3
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▶︎ 6
▶︎ 7
▶︎ 8-1
▶︎ 8-2


※コラムの内容はコラムニストの個人の意見・主張です。
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