「Emiko's Japanese Homestyle Cooking 日本の家庭料理」
2013-03-06
救急救命士目指す学生支援のために作られたレシピ本
~母親と亡くなった息子がともにする仕事~
南カリフォルニア在住の関根恵美子さんが、手早く簡単に美味しくできるレシピ本、「Emiko's Japanese Homestyle Cooking 日本の家庭料理」を10月に出版した。この本の純益は、救急救命士を目指しUCLAで勉強する学生を支援する「Mitch Sekine Memorial Fund」に寄付されている。出版までの経緯を恵美子さんに聞いた。 =Tomomi Kanemaru
何もできなくなってしまった…
恵美子さんは、20年前、2人の息子さんとともに日本からカリフォルニア州に移住してきた。そして、姉の恵津子さんと一緒に、家庭料理のレストラン「E&Eカフェ」をノースリッジで開き、2007年まで経営した。閉店後は、レストランの顧客たちから要望があったレストランメニューのレシピ本を執筆する予定だった。しかし、その夏、恵美子さんの次男、道仁さんが交通事故で亡くなった。
「私の人生は一転してしまいました。それまでは、少々のことではへこたれない性格だと思っていましたが、何もできなくなってしまい、人とも会うのが嫌になってしまいました」。このような状態が4年も続いた。しかし、昨年から友人に頼まれて、若い家族へ夕食を作り、配達する仕事を始め、少しずつ外出するようになった。
「私も自分でもできることを考えて、料理の本を作ることにしました。この本の全てのレシピは、息子たちを育てた時に私が作っていたものです。フルタイムで仕事をしていた私にとって、母親としての愛情表現は食事を作ることでした」
食事の時、道仁さんは、「おいしい」と笑顔で食べていたと言う。「その笑顔に癒された」と恵美子さん。
道仁さんが亡くなり今年で5年が経った。「この本をまとめたことで、精神的にも一歩前進することができそうです。素人の私が作った本ですから、どなたにも簡単に作れるように工夫しました」
息子は何倍にも生かされている
「Emiko's Japanese Homestyle Cooking 日本の家庭料理」の純益は、「Mitch Sekine Memorial Fund」を通して、奨学金として使われている。
「奨学金は、みんなの10ドル、20ドルという寄付で成りたっています。学生も奨学金をもらったことで、普通の人たちの支えで勉強ができるという意識を持って、責任を感じて勉強してくれています。
私の息子は亡くなったけれど、私と息子がやっていく、神様に使っていただくための仕事だって、すごく感じています。息子がまだ生かされている。何倍にも生かされているって強く感じます」
人を育てるために作られたレシピ本「Emiko's Japanese Homestyle Cooking 日本の家庭料理」は、1冊20ドル。2冊以上購入すると送料は無料。詳細は、恵美子さんまで。
esekine2@hotmail.com
Mitch Sekine Memorial Fund
救急救命士として働いていた関根道仁さん=写真=は、2007年8月3日、交通事故に会い、28歳という若さで亡くなった。志半ばでの死を悼み、家族や友人たちは基金を設立。奨学金は、救急救命士を志す学生の育成を支援し、社会に貢献することを目指している。このような形で道仁さんが永遠に生き続けることは、彼を失った家族や友人の心の痛みを癒し、生きる支えになっている。
奨学金は、UCLAParamedic Education Programで私費で学ぶ学生が対象。出願書類は運営委員会が厳正に審査する。毎年、9月、1月、5月にそれぞれ1年のコースで、各1人に奨学金を授与。現在までに、4人がこの奨学金を取得して救急救命士になった。
■ 道仁さんのホームページ:
www.mitchliveson.com
■ 基金の応援方法
1. レシピ本を購入する。
2. 上記ホームページから寄付、または、チェックを下記まで郵送。
UCLA
Center for Prehospital Care
c/o Rosa Calva
10990 Wilshire Blvd., Suite 1450
Los Angeles, CA 90024
チェック宛名:UCLA Foundation
Memo: Mitch Sekine Fund
関根恵美子さん
「Emiko's Japanese Homestyle Cooking 日本の家庭料理」
レシピ本は日英両語で書かれ、写真付き。「アメリカ人の友達へのプレゼントに最適!」と大人気。イラストは野口勝さん
救急救命士として働いていた関根道仁さん
10月14日に、サンフェルナンドバレーで行なわれたファンドレージング・イベント。主催した道仁さんの家族と友人たち