カリフォルニアからトリニダード&トバゴ共和国へ 着物ショーで各国大使と交流を深める
2015-04-28
着物コンサルタントの芥川婦身さんが、妹の細淵也絵子や友人たちと、4月中旬にトリニダード&トバゴ共和国を訪れ、手塚義雅在トリニダード・トバゴ日本国大使と協力し着物ショーを開いた。会場となった在トリニダード・トバゴ日本国大使館には、同共和国に駐在する各国の大使が招待され、日本の伝統文化を楽しみながら交流を深めた。
トリニダード&トバゴ共和国はカリブ海に浮かぶ、トリニダード島とトバゴ島の二島と属領からなる共和制国家。首都のポートオブスペインで開催されるカーニバルは、リオやベネチアナに並ぶ世界三大カーニバルの一つと言われている。同共和国に2012年から駐在する手塚日本国大使は、2010年まで在ロサンゼルス日本国総領事館で主席領事を務めており、今回の着物ショーは、その頃からの手塚大使と芥川さんの交流がもとで実現した。
手塚大使と芥川さんの交流は、2008年にキャニオンカントリー市のシエラビスタ中学校で開かれた茶道のクラスまで遡る。茶道の師範でもある芥川さんは、2001年から同校で茶道のデモンストレーションを行っているが、ある年、当時の手塚主席領事が総領事館スタッフと共に出席した。翌年の西本願寺で開催された「米国版紅白歌合戦」では、手塚主席領事が審査員として招待され、その時に、芥川さんが着付けを担当。その後もロサンゼルス山梨県人会の新年会などでも一緒になる機会があり、家族ぐるみの交流が今日まで続いてきた。
着物ショーのきっかけは、トリニダード&トバゴ共和国に赴任したばかりの手塚大使が芥川さんへ言った言葉だった。「トリニダード&トバゴ共和国には日本人が30人程しかおらず、日本文化の紹介ができないので、着物やお茶のデモンストレーションをしてもらえたら嬉しいというような内容でした」と芥川さん。この言葉が芥川さんの中からずっと消えなかった。
ロサンゼルスの博物館、学校、公園などの公共な場所で着物ショーや茶道のデモンストレーションを積極的に行い、日本文化の普及に取り組む芥川さんだが、「いつか、トリニダード&トバゴ共和国のみなさんにも日本文化に触れていただきたい」と思いながらも、3年が過ぎてしまった。「今年こそ行かなければ後悔する」と、日本文化を紹介するためにボランティアでトリニダード&トバゴ共和国へ飛んだ。
ショーの冒頭、挨拶をする手塚大使(後方中央)
着物ショーで、ゆかたを披露した芥川さんの友人の櫻井夫妻(右側二人)
静かでキレイな海に囲まれたトリニダード&トバゴ共和国の4月の気候は、湿気があるので蒸し暑く、日本の夏と似ているという。そんな中、着物ショーは4月15日に開催された。この日、アルゼンチン、バハマ、カナダ、コスタリカ、ブラジル、中国、ヴェネズエラなど各国の大使たちが招待され、初めて本物の着物を見るゲストもいたせいか、期待が高まる中、開始時間よりも早めにゲストたちは日本国大使館に到着した。
手塚大使が芥川さん一行の紹介してショーが始まった。芥川さんが四季の着物について説明し、手塚大使が夏の着物を、手塚夫人が冬の着物を着て日本の伝統を披露した。このショーのためにわざわざ日本から共和国を訪問した手塚大使のお嬢さんは振り袖を着て、日本の美をゲストたちにアピール。招待された大使たちには、はっぴコートやドレス感覚で着られるタノシック着物を試着用に用意して、着物に親しんでもらった。
ゲストたちが関心を示したのは、華やかな振り袖と男性のゆかただったという。質疑応答では、着物の値段や着用に必要な時間についてなど、いろいろな質問が出されて着物への知識も深まった。翌日の現地の新聞「Guardian」と「Express」には、写真入りで着物ショーの記事が掲載され、トリニダード&トバゴ共和国内の読者にも日本文化が紹介された。
ショーが成功に終わり、芥川さんは「大使のみなさん、着物について勉強できましたと喜んでくださって安堵いたしました。私たちの日本人の先祖が作ってくださった物は、自分だけのものではありません。一人でも多くの方に伝えていくのが、海外に住む者の義務だと思っています。これからもご要望があれば、ボランティアで参ります」と感想を話した。芥川さんの“着物大使”としてのさらなる活躍が楽しみだ。
手塚大使ご家族
在トリニダード・トバゴ日本国大使館にて記念撮影する(左から)芥川さん、手塚大使のお嬢さん、手塚大使夫人、手塚大使、細淵さん、芥川さんの生徒
(写真提供・細淵さん、文・Tomomi Kanemaru)

