元WBCアジアヘビー級チャンピオン、樋高リオの試合が決定
2023-11-03

ボクシングの世界では、強いが故に試合を避けられる選手がいる。いくら選手が試合を望んでも、育てた選手が壊されるリスク避けるためにコーチやマネージャーなどの陣営側が許可しないことがある。
2015年に日本人初のWBCアジアチャンピオンを獲得し、日本人未踏の世界ヘビー級チャンピオンを目指して渡米していた樋高リオもその1人だ。その彼の試合が11月18日に開催される。
対戦相手のキャンセルが続く中、38歳を迎た2019年。勝負の1年としていた12月にコロナウイルス感染症が世界を襲った。「ファイトマネーを全額相手に渡しても構わないから試合をやらせてほしい」とマネージャーに訴え続け、2020年3月に試合が決定していたが、パンデミック対策によりアメリカでボクシングの興行が開催されなくなり、待望の試合が開かれることはなかった。
「人生が終わったと感じました。」と樋高は話す。
世界中がロックダウンという前例のない事態、ジムが閉鎖され練習場所も失われたが、一生は続かないだろうと心を切り替え、ガレージでのウェイトトレーニングやランニングなど、限られた環境の中でできる限りのトレーニングを続けていた。
だが、アメリカでの状況は一向に変わらず、一方で日本では感染予防対策下ではあったがジムは営業をしている状況で、「この年齢で大きくブランクを作ってしまうと、取り返しがつかなくなる」と危惧した樋高は、日本に戻ることを選んだ。
帰国後、ジムでトレーニングを積むことはできたが、日本はヘビー級の選手層が薄く、十分にスパーリング(試合形式の練習)を行える環境ではない。エキシビジョンマッチで日本のリングに立ったが、後援会長の「アジアのタイトルを獲ったのだから、アジア人との試合を見たくない。世界で戦うリオが見たい。」との熱望もあり、選手層の厚いアメリカに戻る機会を待ち続けていた。
その樋高が試合をするためにLAに戻ってきた。前回の試合から今回まで7年空いていることは大きいのではないかとの問いに、「確かに大きいと思いますが、終戦後に29年の間戦い続けた小野田寛郎さんに比べたら大したことはありません。」と樋高は答えた。
「日本人は忍耐強く諦めない強い心を持っている民族だと思うので、簡単に諦めたりしないように、礼儀も含めて一人の日本人として恥ずかしくないようにしたいと思っています。」
そう話す樋高の言葉に、なぜ彼が挑み続けることができるのか答えをもらった気がした。
世界チャンピオンになることのほかに、彼にはもう1つの夢がある。自身が歳を重ねるにつれ、中年と言われる世代に元気がないことを実感し、「こんな7年も棒に振った奴が、まだまだいけるぞと、若い子達には夢を与えたい、そんな思いを持った自分が戦う姿を生で見てほしい。」と、試合へ挑む己の姿が誰かの力になる事を願っている。

「どんなスポーツ、競技でも一人でやっているのではないということを強く実感します。」とパンデミックを乗り越えて思うことを樋高は話してくれた。
「1人で戦うボクシングでも、相手がいなければ戦うこともできない、協会の人がいなければ試合が行われることもない。なぜ試合が決まらないのかと考え、自分なりの答えを求めて多くの人に会い、色々な方面の勉強をして、大事なのは”1人でやっていない、そこには必ず人がいる。自分はその人達とやっている”と思うようになり、その事を重く受け止めるようになりました。」
さらに、「過去を振り返ると、己自身だけの力でやってきていると思っていた時期があり、周囲の人達の支えがあってここまで来られたと理解はしていましたが、自分の力で行こうという意識が強かった。しかし、その心構えの期間は、結果は出せず、状況は好転せず、試合が決まる事もありませんでした。今にして思えば、全ては人と人がすることなので、コミュニケーションがしっかりと取れなければいけませんし、もしかしたらそれがほとんどかもしれません。」と続けた。
困難な時期を乗り越え、人としての魅力が深まった樋高。彼の試合を告げるゴングが7年越しに鳴ろうとしている。
◆協賛・スポンサー支援についてのお問合わせ先◆
メール: hidakario.funclub@gmail.com
facebook: @rio.hidaka
樋高リオ 試合情報
日時:11月18日(土) 午後4時開催
場所:DIAMOND STADIUM 500 Diamond Dr, Lake Elsinore, CA 92530
チケットのお申し込みは下のQRコードあるいはこちらのリンクから。
*樋高選手の試合はセミファイナルのため( 全12試合)、主催者情報では午後6時以降の見通しですが、ボクシングはKOで早く決着がつく事があり、時間の大幅なズレが予想されます。


