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第19回 ポエム・タウン
<成人の部 短歌 入賞作品>
西岡徳江選 船先を海峡に向け佇みし連絡船は津軽に似合ふ 堀 勝
佳作 四年目で実を結びたる梨二つ分けて食べたり我とポッサム たなか きんいち
岩見純子選 釈放を控えて悩む身の危険ギャングの街に戻る少年 生地公男
佳作 しぐれれば早瀬は白き真室川家も稲穂も山に埋もるる 堀 勝
西岡徳江選佳作・岩見純子選佳作 ドングリの屋根打つ音の止まずして実りの森はリスに優しい 石井志をん
日刊サン選努力賞
ああ言えばこうと答える世の中の末路に隠す原爆の影 日高かおる
リモコンを片手にテレビの前に座し笑える彼の姿はもう無く 中原キャシー
今年の雨季待ちわぶるこの庭に風にはためく枯葉が鳴れり 神野豊子
わが年を訊いた老人得意げに九十四とおのが歳言う 古田和子
行く年ももったいないと古着ため其の箱部屋を我が物に 浅子 恵
選者のことば
―選者・西岡徳江
通俗的な表現は避けて、自分の目や耳、体験を通して表現した歌が共感をよびます。
「船先を—」。下句に無駄な言葉がなく、連絡船と津軽を七、七にまとめ読む者の共感を誘います。「佇みし」は「佇める」が良いと思う。
「四年目で—」。自然の動物と人との関わりが梨を通して温かく伝わってきます。
「ドングリの—」。秋の豊かさが伝わってきます。リスに心を傾けて秋の森をやさしく表現しました。
―選者・岩見純子
今回は、近年を反映した歌では、パソコン、リモコン、節水、過疎化等を詠んだものがあった。いつの世にも詠まれる歌では郷愁や思い出を詠んだものが多く、木や花、季節や風景、家族や友人等を詠んだ歌もあった。読み応えのある歌もあった。
「釈放を—」 。この歌の主人公は少年。釈放されても、身の危険のあるギャングの街にしか戻って行く所はないのか。悲しい現実をうまく捉えた。
「しぐれれば—」。 東北の真室川音頭で知られる地方の風景。時雨のため辺りは霞み、家も稲穂も見えない。その状景を背後にある山に「埋もるる」としたのだろう。纏まりのいい秀歌。
「ドングリの—」 。上の句「ドングリの屋根打つ音の止まずして」は特にいい。結句は「リスに優しい」と作者が言ってしまわないで、読者に想像の余地を残すような言葉が欲しい。