JANMへ行こう!! vol.25 - 二つの祖国のために戦った帰米二世から話を聞く3
今月のガイド
安田ヘンリー章一郎 さん
アメリカ生まれの帰米二世。10歳のときに日本へ養子として送られて、二重国籍のため海軍兵学校に入学。戦後はアメリカに戻り、朝鮮戦争に戦争処理のためアメリカ兵として徴兵される。その後、日本勤務になり、軍隊で通訳として働きながら戦後の日本の復興を手助けする。再びアメリカに戻りビジネスを展開。引退後は日系社会やJANMでボランティア活動に力を注ぐ。
―安田さんは義務徴兵終了後、日本で10年間アメリカ政府のために働きました。その裏に特別なお気持ちがあったそうですね。
JANMには日本から天皇皇后両陛下をはじめとする皇族の方々や政界からも多くの政治家が訪れる。小渕恵三総理大臣もその一人。安田さん(左)は小渕総理(右)にJANMの展示や日系史を説明する案内役を務めた
「終戦の日、天皇陛下の玉音放送の後、海軍兵学校の校長閣下が『陛下に対して敗戦をもたらしたことへのお詫びに、お前たちは今から短剣を抜いて切腹しろ!』とおっしゃいました。続けて『お前たちは日本復興のために生かされたことを忘れるな。何かの形でお前たちは恩返しをしろ』というような鋭い言葉をいただきました。この言葉が私の中にずっと残っていたので、母から『アメリカへ行ってくれ』って言われたとき、私は考えてしまいました。けれど“将来はいつか”と思っていて、幸運にも、朝鮮戦争でアメリカのために尽くした後、アメリカ国防省の仕事で日本に滞在する機会を与えられました。日本の復興に全力を尽くすという気持ちでした。
当時はまだ日本の会社には英語をペラペラ話す人がいなかったので、私は日本とアメリカの会社の折衝役を引き受け、通訳もしながら、アメリカ側の契約官としていくつもの契約書に署名しました」
―安田さんのお宅の床の間に掛け軸がかかっていますね。
「いつも私が唱えている日本の素晴らしい『大和魂』です。大和魂とはいかなる場合においても自分のベストを尽くすことで、腹を切ったり、そんな侍的なことはありません。
私は二重国籍を運命的に持って生まれました。日本に行ったとき日本は軍国主義で、天皇陛下のためにとかそういうことではなく、日本人としてすべき自分の義務は日本を守ることでした。だから海軍兵学校に徴兵されたのも喜んで受けて、自分のできる限りの最善を尽くすことに、私はすべてを捧げました。アメリカに戻ってきたときは、アメリカ市民の義務を全うするために朝鮮戦争への徴兵に応じました。
私は自分の義務を果たしただけで、日本兵でありながらアメリカのために戦ったとか、アメリカ兵として朝鮮で戦ったとか、そんなことではありません。その場その場を大和魂の精神に基づいて自分の最善を尽くしただけです」
―二つの祖国を持つことでの葛藤は想像を超えます。
ガイド・ツアー オンラインお申し込みはコチラ▶
もっと知ってJapanese American!
日本村のあった島・ターミナル・アイランド②
ロサンゼルス港の一隅に、かつて約3000人の日系アメリカ人が暮らした「日本村」が存在した。そこに建てられたモニュメントを紹介する第2弾。
1941年12月7日、日本軍がハワイの真珠湾にあったアメリカ基地を攻撃したことで平穏だったターミナル・アイランドの「古里」に住む日系アメリカ人の生活は一変した。
瞬時にして日系人は、アメリカの敵・敵性外国人と烙印された。
碑文に刻まれた文章によると、翌年の1942年2月25日、突如、アメリカ政府により立ち退きの命令が出された。それは「48時間以内に完全撤去せよ」との過酷極まりない非情な内容であった。彼らの大半はマンザナ強制収容所に送られた。
日系人が立ち退かされた後のビレッジでは、アメリカ軍によって家屋が解体され、「古里」は消滅した。ターミナル・アイランドの日系人たちが精神的な支えとしていた神社も、みんなで寄り合い励ましあったホールもビジネスの牙城も、何もかもがなくなってしまった。
1945年8月、日本は敗北し第2次世界大戦は終結した。
ターミナル・アイランドには、日系人が戻る古里はなくなったが、もう一度自分たちの「心の古里」を構築しようと、1980年に「ターミナル・アイランダーズ」が再び集結したのである=写真左。
モニュメントの中央に設置された男性二人の像―漁綱をひく男性と、遠くに目をやる老人。このモニュメントは長年ターミナル・アイランダーを支えてきた2世、3世たちが中心となって、2002年に建てたものだ。
建立10周年の式典には、地元ロサンゼルス港湾局や市から大勢の来賓が参列し、祝辞を述べた。長年ターミナル・アイランダーズの中心者として再興に尽力してきた巽(たつみ)幸雄さんは、2013年に日本総領事館から表彰を受けた。
古里ターミナル・アイランドは消滅してしまったが、心の古里は永遠に彼らの心の中に色あせることなく残っていることだろう。
JANMに行くと日刊サン読者にプレゼント!
入館料お支払いの際に「日刊サン掲載の『JANMへ行こう!!』を読んだ」と言うと、『ワシントンへの道 ~米国日系社会の先駆者 ダニエル・イノウエ議員の軌跡 ~』と『知られざる政治家 ラルフ・カーとニッポン人』の2つの日系移民史ドキュメンタリーが入ったDVDを特別プレゼント。昨年末に亡くなった大統領継承順位第3位のイノウエ議員のインタビュー入り。非売品なので貴重なDVD!
*入館料をお支払いの上、入館された方のみ対象。
JANM・ジャニム(全米日系人博物館)
Japanese American National Museum
日系アメリカ人の歴史と体験を伝えるアメリカ初の博物館。アメリカの人種と文化の多様性に対する理解と感謝の気持ちを高めることが目的。ボランティア・ガイドに支えられ、訪問者は展示にはない興味深い話を聞くことができる。
100 N. Central Ave. Los Angeles, CA
・213-625-0414
http://www.janm.org
開館:火・水/金・土・日 11:00 ~17:00
木 12:00 ~20:00
休み:月曜
料金(企画展も含む):一般9ドル、シニア&学生&子供5ドル、メンバー無料
*木曜17:00 ~20:00、毎月第3木曜は無料
交通:メトロ電車:ゴールドライン「Little Tokyo / Art District」下車。徒歩1分
駐車場:あり。博物館前、他多数(有料)
★「ボランティア・ガイド」に関心のある方は、下記まで。
213-830-5645
2014/02/01 掲載