後藤英彦のぶっちゃけ放題!
第99回 ”ガイジン”は身内じゃない
2010-12-14
双葉山の六十九連勝まで六つのところで、よもやの白鵬に土がつきました。「残念!」の声、しきりです。しかし最後の砦を蒙古人・白鵬に破られなかったことに、ホっとしている日本人の多いことも事実です。
王貞治の本塁打五十五本(一九六四年)超えに挑んだガイジン三選手。彼らを敬遠攻めで退けた、日本人の排他性を思い出させるシーンでした。
阪神のランデイ・バースが五十四本打っていた一九八五年秋の時点で、残り試合は二試合でした。
二試合とも巨人相手で、五十五本の王が巨人の監督でした。投手の江川卓は三打席とも勝負に出ましたが、ほかの投手はハナから逃げ腰でした。
巨人に在籍していた投手キース・カムストックはのちに当時を振り返り、「バースにストライクを投げると、一球に百万円の罰金が課されていた」と書いています。
バースも「ガイジンに、記録達成は無理」と諦めていました。この年、彼は三冠王に輝きましたが、本塁打は五十四本で終わりました。
○一年九月三十日現在、五十五本を記録していたタフィ・ローズ(近鉄)はこの日のホークス戦で五十六本目を狙いました。
相手チームの監督はまたもや王。バッテリーコーチWは「どうせローズは米国に帰るんだから、監督(王)の記録を守ってやらないと」と発言、ローズに対し敬遠を命じたそうです。
この年のローズは王の記録を上回る五十八本ペースでしたが、ことごとく敬遠によって阻止されました。
○二年のアレックス・カブレラ(西鉄)も五十五本で足止めを食い、敬遠二十九個の前に記録更新はなりませんでした。
もっとも大リーグでも、打たれたくない、負けたくない投手の気持ちは同じです。本塁打七十三本の記録保持者、バリー・ボンズに敬遠百二十個という桁外れの記録を献上しています。
排他的で身内本位の日本人と、勝ちに手段を選ばない米国人の違いを勝負の過程で知らされました。
※コラムの内容はコラムニストの個人の意見・主張です。