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コラム

編集部
特別インタビュー アシュラムセンター主幹牧師・榎本恵氏 後編

2014-02-28

自分を超えたところで働いているものがある
それが働き出した時、今までバラバラだったピースが繋がってくる

  キリスト教のアシュラムセンター主幹牧師の榎本恵(めぐみ)さんは、「ちいろば先生」と広く知られた牧師、榎本保郎さんを父に持つが、30代後半まで牧師の道には進まなかった。まわりの教会関係者は恵さんが牧師になることを諦めたが、恵さんの母、和子さんだけは諦めなかった。和子さんの乳がんの手術を機に、牧師への道を歩んだ恵さん。今、亡くなった父と同じ年になり、父が亡くなったロサンゼルスで、父の意志をあらためて受け継ぐ。
=Tomomi Kanemaru



回ってきたから確信できる

 今はキリスト教の牧師をしてますが、僕は回り道をしてきたから今があると思っています。何にも疑問なしに牧師になっていたら、たぶん今とは違うことになっていたと思います。コップは同じだけれども、入れてる物が違うみたいな。
 「アシュラム」は、キリスト教の祈りの運動なのですが、「祈って何が変わるんだ」「祈りなどただの気休めにしか過ぎないじゃないか」と、そんな反発を昔、僕は言ってたんですよ。最終的に今は祈りしかないと。しかし、それは回り道をしなければ分からなかったのではないでしょうか。あまりにも愚かな人間かもしれませんが、自分としてはずっと回り道をしてきたからこそ、今では自分の中で確信できるのです。
 「祈ってて平和になりますか」という質問を受けることもあります。私たちは「平和アシュラム」というのを台湾と日本でやっていますが、「祈ってて沖縄の基地がなくなったか」「日本は平和になってるか」と聞かれます。確かに、祈りは直接の行動に比べて、弱いものに見えるでしょう。しかし、弱いときにこそ強いのです。
 内村鑑三先生の言葉ですが、「祈りは聞かれないのではない。今、聞かれないのだ」というのがあります。私たちは、この「今」をいつも問題にする。この「今」というのが何かと言ったら、それは人間の側の都合なんですよ。“自分の思ってるときに、自分の思ったように、自分の考えてる物を手に入れたい”という。そのことがある限り、祈りは聞かれないのではないでしょうか。たとえ聞かれたとしても、その祈りは次元の低いものなのではないのでしょうか。


「祈りは聞かれないのではない。今、聞かれないのだ」


 沖縄の反戦運動家、阿波根昌鴻(あはごん しょうこう)さんは、101歳で天に召されました。彼は沖縄にあるアメリカの基地が返還されることを訴え続けました。しかし自分の耕作地がかえって来たかと言うと、そうじゃない。阿波根さんが言った「負けて勝つ」という言葉は、「負けるが勝ち」のような負け惜しみではなく、「必ず勝つということを信じて続けていく」という意味です。たとえ自分一人の代では果たせなくても、自分の今ではない、真理の今を信じていたのです。
 僕は、その阿波根さんのもとで、十数年を過ごしました。阿波根さんは亡くなりましたが、その祈りは、僕に確実に手渡されていると思っています。そして僕たちもまた誰かに手渡していく。必ずそれは実現するんだという確信の下に生きたら、今、少々右傾化しているとか言われていても、その時代を辛抱していけるんじゃないかなと思ってます。「自分の思ってるときに」「自分の目の黒いうちに」とか、それはやはり自分の「今」なんです。
 その「今」というのをもっと問題にしないといけない。「今」ということの中にあるエゴとか、実現しないときに嘆いたり、諦めたりする。だから、内村先生の言葉は大事にしてます。
 私の都合、私の時間、私の計画、私の理想とか、それらを全く超えたところで働いているものがあって、 それが働き出したら、今までバラバラだったピースが繋がってくる。僕が、36年の時間を越えて、ロサンゼルスに来た話のように。ロサンゼルスには、これまでも他の用事で幾度も来ているのに…だからこれが神の今なんです。「ああ、今だったのか」って。
 36年前、父はロサンゼルスで行うはずの「アシュラム運動」をすることができず、苦しい闘病生活の末、亡くなった。「神様信じてても、こんなことになるんか…」みたいな話だったと思うんですけど、それが36年経って、その息子がもう一度父から手渡された「アシュラム運動」というものを持って、ロサンゼルスにやってくる。なんか感じるものがありますよね。
 「アシュラム運動」は、頭の宗教とかご 利益宗教ではなくて、沸き上がってくるような喜びとか、想像もしないような出来事とかが、実はこの世界には溢れているんだよということの証しになっていけたらいいなというのが、私の願いです。


恵牧師の父、榎本保郎牧師の伝記『ちいろば先生物語』を書いた作家、三浦綾子さんが、「ちいろば先生」に向けた弔辞=1977年8月3日


ちいろば先生が亡くなった後、19778月に和子夫人が家族連盟で知人たちにあてた手紙。そにには、「尚、長男恵は主人が病床に於て束の間の意識回復の時『僕もお父さんのように伝道者になります』とはっきり申しました。まだ十六才の若年故に決心のぐらつくこともあるかと存じますがどうぞその決心を貫くことができますよう御祈り下さい。」と書かれている


【榎本 恵プロフィル】
 同志社大学神学部卒、1989年沖縄県に移住。反戦平和資料館「財団法人わびあいの里」理事、日本キリスト教団よきサマリア人伝道所担任教師、田崎病院精神科デイナイトケアー職員兼任を歴任。2007年に宗教法人アシュラムセンター主幹牧師に就任。

【クリスチャン・アシュラム】
 アメリカ メソジスト教会の宣教師Eスタンレー・ジョーンズ博士によって始められたキリスト教超教派の退修会(リトリート)。インドをはじめ世界中に広がり、日本にも1955年に紹介されて以来、日本クリスチャンアシュラム連盟と榎本恵牧師が率いるアシュラムセンターとによって現在も続けられている霊性運動である。


※コラムの内容はコラムニストの個人の意見・主張です。
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