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コラム

後藤英彦のぶっちゃけ放題!
第166回 川柳に苦楽を託す日系庭師

2012-04-05

 川柳句集「ガーデナ風雲録」(関三脚編、南加庭園業連盟発行)に収められた一句。「夫婦して開いた土地は人のもの」。
 カリフォルニア州議会で成立した「外国人土地法」(一九一三年)で日系人の土地所有が禁じられます。苦労して開いた土地を白人に渡すしかないそのやるせなさ・・。

 武力による日本のアジア進出で日米関係が悪化、日系移民にしわ寄せが来ます。
 誰を恨むわけでもありません。「白人のお客が減ってくる時局」、「秀才も使ってくれぬ皮膚の色」。日系庭師の嘆き節。
 我慢と誇りが交錯します。「唇をかんで試練へ血を誇り」、「アメリカの庭師の誉れ緑化の美」。
 重ねて試練。日本軍の真珠湾攻撃で太平洋戦争が勃発し、日系人は「敵性外人」のラベルを張られ、明日は強制収容所に連行される定め。
 やがて戦争終結。出所してきたものの顧客は去り、白人、黒人庭師のもとにいます。客を求めて再出発し「庭園師の白、黒、黄とにらみ合い」。
 米国人とて盲目ではありません。日系人の仕事の丁寧さ、誠実さを知っています。「日系が来れば草花庭に咲き」。
 給油を終えた日系人が財布を忘れたことに気付き「明日払う」と交渉したが、「ふざけるな」とどなられます。
 しかし日系庭師と知ると「ならば払いはいつでもよい。信用している」といわれたそうです。「ガーデナ風雲録」にみえるエピソードのひとつ。
 
 信用を寄せられつつも日系人はとかく偏見の目でみられました。英語が通じない、何を考えているかわからない。
 そこに白人同業者が付け込みます。英語テストによる「ライセンス制度」で、収容所から出てきた日系庭師を合法的に追い出そうとします。
 危機一髪。日系庭園業協会の働きで差別法案は流れます。苦しいことは次から次。
 しかし日系庭師はへこたれません。苦境は歌に託して乗り越えるまで・・。(次句のツラックはトラックのこと)
 「ツラックへ積んだ塵にも虫の声」


※コラムの内容はコラムニストの個人の意見・主張です。
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後藤英彦

一九六四年時事通信社入社。旧通産省、旧農林省、旧大蔵省を担当後、ロサン
ゼルス特派員。本社海外部次長。途中希望退社して盛岡大学客員教授、評論活
動。二度目の来米でジャパン・ジャーナルを主宰。講談社、エルネオス系を中心
に寄稿中。主著に「日本をダメにした官僚の大罪」(講談社)。中大法学部法律
学科卒業。福岡県出身。グレンデール在住。

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後藤さんのブログ http://blogs.yahoo.co.jp/jajala816




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