キム・ホンソンの三味一体
vol.12 燃え尽き症候群に効く「モ~」効果
2012-08-29
リトル東京日韓友好イベントが8月12日に無事終了しました。多くの賛同とサポートがあったからこそ、少数の実行員たちでも成し遂げることができたと思います。しかし、フルタイムの仕事とイベント実行員という二足のわらじは、やはりきついものがありました。“日韓の友好のために”という目標が、いつしか「これを終わらせたら家族で休みを取ろう」「早くやり終えたい」という目標に危うく替わってしまいそうになる時もありました。(笑)
イベントが終了してから数日後、その充実感はどこへやら「果たして本当に少しでも日韓の友好に役に立ったのだろうか」と懐疑的になったり…「燃え尽き症候群」のようになっていたのだと思います。
休みを取り、家族で待ちに待ったサファリパークに行った時もそうでした。「約束したのだからしょうがないか」という気持ちのまま長距離を運転し、暑い中、列に並んでトラムに乗り込み、動物たちを眺めていました。
私たちの席の前後には、小学生ぐらいの子供たちが大勢乗っていました。彼らは動物が視野に入って来ると「Rhino(サイ)! Giraffe(キリン)!」と、我先に名前を叫んでいました。動物が大好きな2歳と1ヶ月になる我が娘も、最初は私の膝の上に立つような格好で身体を乗り出して「しまうま!とり!」と指差していましたが、他の子供たちの勢いに押されてか、いつしか私の膝の上に座ったまま静かになってしまいました。大好きな動物であっても、まだ英語で名前が言えないのです。
そんな娘をかわいそうに思って様子を見ていた時です。娘が、突然、私の両膝に再び立って一点を指差しながら「モ〜、モ〜」と大きな声で叫び始めたのです。あまりの大きな声に私たちを含め、まわりの子供たちまでもが一体何事かとびっくりしました。娘の指差している前方に間もなく現れたのは、木の下で涼んでいた水牛でした。
「本当だ。牛だよ。モ〜だ。グッジョブ!」と一人の子供が言うと、パッと場が明るくなって和みました。娘はとても恥ずかしそうにうれしそうに笑っていました。私も娘の「モ〜」によって、それまでの燃え尽きたような気持ちが一気に晴れました。
3人で撮ったサファリパークでの写真を見ながら確信するのです。「何もかも万能にできなくても良い、一つのことができれば十分だ。それがたとえ地道な努力を要する地味なことであっても。自分がこれだ、と思うこと、皆にもきっと役立つと信じていることを、頑張って続けていこう」。
今日も娘から勇気をもらっています。
※コラムの内容はコラムニストの個人の意見・主張です。