キム・ホンソンの三味一体
vol.16 「その日の苦労は、その日だけで十分」
2012-12-28
12月の半分以上は心配することに費やしてしまったような気がします。事の始まりは今月2歳と5ヶ月になる娘の歯の治療でした。9月頃初めて歯医者さんに連れて行ったところ、虫歯が見つかり3ヶ月ほど様子を見ることになりました。その後今月初めの再診察で虫歯の進行が見られ、歯の治療が決定したのです。しかし私たち夫婦を悩ましたのは、実は治療そのものではありませんでした。
第一に2歳児は治療中にじっとしていられないので、簡単な治療であっても全身麻酔を行わなければなりませんでした。安全だと説明を受けても安心することができず、セカンド・オピニオンを求めたり、日本にいる知り合いの麻酔科医に意見を伺ったりしてようやくギリギリのところで手術の決心がつきました。
第二の関門は、手術の時間が午後3時30分で、なんとその8時間前から断食をしなければならないということでした。お腹が空いて泣き叫んでいる娘の姿を想像してぞっとしてしまった私たちは、朝の時間帯に再調整してほしいとお願いしたものの、次は何ヶ月後になるか分からないということで変更とはなりませんでした。それから手術までの間一体どうしたら良いのだろうか、と毎日のように心配に明け暮れていました。
そしていよいよ迎えた手術当日、早朝の5時に起床した私たちは、次から次へと娘の大好物をギリギリの時間まで食べさせました。ハラハラしながらもなんとか午後3時30分までもたすことができました。しかし、病院のスタッフに「前の手術が押していて手術開始が1時間ほど遅れる」と聞いて、私がイライラしてしまった時のことです。それまでお腹がすいてか静かにしていた娘がオモチャの聴診器を耳につけていつも家でやっているように私の胸に当てて「パパ、けんこうです、だいじょうぶです」と言いました。
聖書に「明日のことまで思い悩むな。明日のことは明日自らが思い悩む。その日の苦労は、その日だけで十分である」とありますが、私たちはまるでその逆だったと気づかされました。当事者の娘は先のことなど何一つ心配せず、ただパパとママを全面的に信頼していたのです。手術が終わってヘトヘトに疲れ果てた私たちを横目に、元気にご飯を食べている娘を見ながら、またも娘に教えらたような気がしました。そしてもう2度と虫歯にはさせまいと娘の歯ブラシを握って誓ったものでした。
※コラムの内容はコラムニストの個人の意見・主張です。