苦楽歳時記
vol. 24 風呂
2013-01-21
きょう(十二月二十一日)は一年のうちで、夜が最も長い冬至。アメリカで生活をしていると、暦の上の時候に対する情緒が鈍化してくる。
最近、友に奨められて、レモンや野菜くずを入れた布袋を、湯船に浮かせて風呂に入る。それらが水道の水に含まれている塩素を吸収してくれるので、身体に良いと教わった。
「柚子湯して髪ゆたかなる山乙女」(有泉七種)。古来より、冬至の日には柚子湯に入る慣わしがある。柚子の香りには、邪悪を祓う霊力が備わっていると信じられていたので、柚子湯の入浴で一年の無病息災を祈った。
一説によると冬至を湯治にかけて、柚子湯に仕立てた理由は、融通が利くようにとの願いからであったという。
「外湯出てすぐに師走の山仕事」(大島民郎)。日本人は風呂好きな民族であるが、入浴はおろか、シャワーも浴びることが少ないのはフランス人だ。
現代のフランス人はそれほどでもないが、女性はデートの何日も前から、シャワーすら浴びないように心掛けるという。そして当日には、意に適った香水を振りかけて出掛けるのである。
かつてナポレオンも遠征中に、「もうすぐ帰還する。風呂には入らぬように」と、妻のジョゼフィーヌへ手紙をしたためた。
風呂上がりの、しっとりと和らいだ妻の容姿を垣間見て、わが女房に惚れ直すのが日本の男性。方やフランスの男性は、女性の汗染みたフェロモンこそが、情欲をそそるための妙薬になる。
世間ではホリデーシーズンたけなわ。僕は陋居にて、今年こそは、来年こそはと、温泉で休暇を過ごせることを夢見ている。
※コラムの内容はコラムニストの個人の意見・主張です。