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コラム

苦楽歳時記
vol. 27 アメリカで最も美味な食べもの

2013-01-21

アメリカで最も美味しい食べものは、中華料理だと思う。アメリカの大都市には必ずチャイナタウンがある。今や美味しい中華料理を食べさせてくれる都市は、ニューヨーク、サンフランシスコ、ロサンゼルスだ。その次に香港と神戸、横浜と続く。

三十六年前に、一度だけ香港へ旅行をしたことがある。何に感銘を受けたかというと、飲茶の味が、この上なく佳味であったことである。僕はツアーの仲間から抜け出して、大食漢の友と一緒に、美味しいものを求めて香港の街を巡り歩いた。リーガーデン・ホテルの隣にあった小さな中華レストランで、海鮮スープとチャーハンを賞味した折、僕たちは滋味に富んだ深い味わいに、仰天してしまったのである。

しばらくして、香港が中国に返還される時期が迫っていた。富裕層や一流シェフらが、海外へ移住しだした。これによって、アメリカが香港を抜いて中華料理の味、ナンバーワンとなったように思う。

ここロサンゼルス・ダウンタウンにもチャイナタウンがあり、またモントレーパークから北東にかけて、巨大な中国人コミュニティーが広がりを見せる。美味そうな中華レストランが軒を並べ、どこに決めようかと目移りすることが幾度もある。

ところでニューヨークとロサンゼルスでは、日本のラーメンが大ブレーク。にわかに建ち並んだラーメン屋が、連日、目白押しの大盛況。週末になると、行列のできる店もある。

新しく開店したラーメン屋を、何軒か食べ歩いてみた。豚骨、醤油、味噌、どれもこれもが納得のいく味だが、日本の選りすぐりされたラーメンの味にはかなわない。

どこのラーメン屋も餃子の味が不十分だ。食べ歩きした数軒のラーメン屋の中には、酢と醤油とラー油を予め混ぜ合わしたものが、餃子のタレとして置かれていた。店の方針とはいえ、あまり感心させるものではない。

僕がロサンゼルスで初めて食べたラーメン屋は、サードとバーモントの近くあった今は無き『味平』。ベバリーにあった『長崎』の、チャンポンと皿うどんの味も忘れがたい。
良き時代であった。


※コラムの内容はコラムニストの個人の意見・主張です。
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新井雅之

文芸誌、新聞、同人雑誌などに、詩、エッセイ、文芸評論、書評を寄稿。末期癌、ストロークの後遺症で闘病生活。総合芸術誌『ARTISTIC』元編集長。




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