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コラム

苦楽歳時記
vol. 28 「超」

2013-01-21

昭和八年(一九三三)前後、日本語が非常に乱れていた。

「映画の宣伝に「超大作」がしきりに使われるようになった。それをまねて、三越、松屋、松坂屋、高島屋が「超特価」と言い出した。「超」の使い方に識者が批判した。もちろん「超満員」もいけない」。
   
これは『日本語シンポジウム』(一九九八)での、井上ひさしさんの講演の一部である。
僕が最初に出会った「超」は、昭和三十年代の夢の「超特急」。後の東海道新幹線「ひかり号」のことである。
 
以来、「超人」、「超心理学」、「超現実主義」、「超能力」など、身近に「超」が氾濫していた。
 
十五年ほど前に、十代の若者を中心に「超」が流行った。「超むかつく」、「超忙しい」、「超面白い」、「チョベリグ」(超ベリーグッド)、「チョベリバ」(超ベリーバッド)。

九十年代後半には、日本から飛び火して、台湾でも「超可愛」といった書き方が流行りだしたそうである。

日本語が非常に乱れていた昭和八年から、三十一年後に改訂された『広辞苑』(第二版)には、「超満員」を「超」の例文として取り上げられていた。
 
第五版になると「超忙しい」、「超愉快」に例文が替わり、「超自然」がなくなった。これらの例文は、若い世代の流行り言葉の延長線上にある。
 
 乱れているのは言葉だけではない。社会のあらゆる秩序と、人間の心の中が掻き乱れている。心が平安であれば言葉は乱れない。また、言葉の乱れではないが、造語や言葉遊びから生まれる新語は、想像力に満ちていている。
 
国民的辞書を編むということは、若い世代に媚びることではなく、識者としての十分な検討と見識のある内容を示すことにあると思う。


※コラムの内容はコラムニストの個人の意見・主張です。
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新井雅之

文芸誌、新聞、同人雑誌などに、詩、エッセイ、文芸評論、書評を寄稿。末期癌、ストロークの後遺症で闘病生活。総合芸術誌『ARTISTIC』元編集長。




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