後藤英彦のぶっちゃけ放題!
第219回信念に生きたサッチャーさん
2013-05-28
先日亡くなった英国の元首相、サッチャーさんに鮮烈な思い出がいくつかあります。
まず一九七九年五月、英国初の女性首相として颯爽と登場します。
日本政府は、翌六月の東京サミットに訪日するサッチャーさん警護に、女性の空手名人二十人をつけることを決め、準備に入ります。
日本側の特別扱いに彼女は英外務省を通じ不満を伝えてきます。「サッチャー氏は首相として来日するのであって、女性としてではない」と。
日本政府の計画が沙汰やみになったのはいうまでもありません。
八二年四月、アルゼンチン軍が南太平洋の英領フォークランド諸島に侵攻した際、断固英艦隊を派遣、世界を驚かせました。
七十四日の戦闘で死者二百五十五人を出しながら敵軍を撃退、島の奪還に成功しました。
武力対決を決めたその演説はとりわけ有名です。「領土は人命より重い」、そういったのです。
たとえどんな流血をみようとフォークランドは渡さないぞ、という意思表示でした。
後年「鉄の女」といわれる強い意思力の片鱗を早くもみせていました。
彼女と真逆の発言をした日本の首相がいます。第六十七代首相の福田赳夫さんです。
ハイジャック犯の要求を入れ「人の命は地球より重い」、そういって日本赤軍に身代金六百万㌦を渡したのです。
さらに超法規の措置として獄中の犯人九人中六人を釈放、「悪党に屈するとは」と世界の非難を浴びました。
日米首脳会談(ワシントン)を終えてLAに立ち寄った福田さんとセンチュリー・プラザで合流、食事を共にしたことがあります。
秘書に向かって「我輩」「我輩」と叫ぶので笑ってしまいました。
「不和があるところに融和を、誤りのあるところに真理を、疑いのあるところに信頼を、絶望のあるところに希望をもたらすことができるように」(聖フランシスコ)。
サッチャーさんの好きな言葉です。
※コラムの内容はコラムニストの個人の意見・主張です。