後藤英彦のぶっちゃけ放題!
第223回LA和道、求道者の実像
2013-05-28
手芸家、木原静玉(久枝)著「八十路のひとり言」の出版記念式に妻と出かけました。
出版社の「日米出版」(朝倉巨瑞社長)を紹介したエンで、祝宴に招かれたのです。
三人の男性(父親を含む)に〝溺愛″された過去が素直な文章で綴ってありました。
舞踊、民謡、講談と続く余興のひと時は、「本当にここは米国かな」といぶかるほどの〝日本″で、彩られていました。
民謡の佐藤松豊さんは祝い歌の「さんさしぐれ」など五曲を唄い、その喉といい三味の音といい、LA離れの芸を披露していました。
創作講談の「木原静玉物語」(四○分)を熱演した吉見愛鶴(愛子)さんの釈台をたたく張り扇の音が、会場いっぱいに広がりました。
来羅した田辺一鶴師(故人)を聴いて「これは私の世界」とばかり師匠の休む楽屋に走り、「何とぞ弟子に」と懇願したのが十年前。
日本の一鶴師を訪ね教えを請い、創作原稿と実演ビデオを山のように送り熱意をみせ、ついに一鶴の鶴の字をもらい受け、特別ワクで入門を許されました。
あり余るエネルギー。早大時代にバイクで世界一周をしたかと思えば、年とともにいや増す和道への無尽の思慕。
数えてみれば、この道二十年の裏千家(松本宗静門下)、十年の創作講談、書道(井上拓泉門下)、詩吟(尚道会)、漢詩、三味線(松豊会)、琵琶(川本旭鶴門下)、着付け(山野流奥伝講師)、舞踊(坂東流)、極真空手(茶帯)、テコンドー(茶帯)など十余流・・。
芸道・武道万般にわが身を投げうつ和道の求道者。珍品、規格外の女性。
この人を女傑といわずに誰を女傑というのでしょうか。
彼女の夫は慶大で西洋哲学を学んだ思索の顔と、全日本学生ボディービル選手権(一九七四年)に優勝した体育系の顔をもつ吉見正美カイロプラクター。
異色の夫婦に二人の息子あり。長男に「鬼若丸」、次男に「嵐丸」と名付けたのは愛鶴さん好み。
LA求道者の一席、これにて『読み終わり』と致します。
※コラムの内容はコラムニストの個人の意見・主張です。