キム・ホンソンの三味一体
Vol.27「目的」ほどに大事な「方法」
2013-11-27
子育てから学んだことの一つに、親の要求を子供に呑ませるためには強制するよりも、それを選ぶよう上手に導くことが大事だということがあります。例えば、朝の歯磨きでも、軍隊式に「起床!歯磨き終了後直ちにクロゼット前に集合!」では何の成果も得られません。そこで、(縫いぐるみに歯ブラシを持たせて)「おはよう、クマちゃんが歯磨きしようって言ってるよ〜。クマちゃんにやってもらう?自分でやる?」などと、「歯磨きは楽しいかも」という雰囲気を作ってあげると従いやすくなります。一見無駄なプロセスに見えて、相手の立場で話すことで得られる成果を考えるとこれ以上合理的な方法はないとさえ思えます。
大人の世界でも全く同じことがあるのではないでしょうか。例えば人から相談を受けて、その人のすべきことが分かっていたとしても「こうしなさい」という言い方はしません。「しない場合のデメリット」と「する場合のメリット」を説明して、あくまでその人の決断を尊重するような勧め方をします。ある同じ行為を促すにしても、その人の立場に立ってその人を気遣う方法で伝える時に、はじめて相手を動かすことができるのではないかと思います。
逆の例もあります。全盲の人が盲導犬と飛行機に乗ったところ、離陸時の安全のため乗務員が盲導犬を別の場所に移動させたそうです。しかし、盲導犬が何度も主人の足下に戻るため乗務員とその乗客が口論となり、最終的には盲導犬と乗客を飛行機から降ろしました。すると一部始終を見ていた他の乗客達が乗務員の対応に抗議し、全員が一緒に飛行機を降りてしまったという記事がありました。乗客全員が全盲の客に共感して抗議したことからも推測できるように、相手の立場に立った言い方でなかったのかもしれません。安全規則を守ろうとした正しい行為でも伝え方によって大災難になりかねないということでしょうか。
先日、日本に一時帰国した時のことです。今月で3歳4ヶ月になった娘を七五三の記念写真のためにデパートのフォトスタジオに連れて行きました。抵抗し続ける娘に冷や汗をかきながら懸命に説得する私でしたが、娘が成人式様のピンクの振り袖を指差しながら「じゃ、パパもアレ着て」と言われ甲斐なく撃沈。しかし、さすがスタッフの方々はプロの集団。オモチャを使ったすばらしいアプローチに娘もついには陥落。写真撮影は大成功に終わりました。
※コラムの内容はコラムニストの個人の意見・主張です。