後藤英彦のぶっちゃけ放題!
第263回 米大リーグの「暗黙の了解」
2014-02-26
電車の「優先席」はいらないと知人が言っていた。
そんな席があるから「お年寄りや障碍者に席を譲らないのだ。優しい心を失った日本人は見たくない」というのです。
社会的に弱い立場の人々に優しく接することはいわば人類普遍の常識であり人の道であり、暗黙の了解事項です。
ところが、です。
「所変われば品変わる」というように場所が変わればやり方も変わるし、常識が非常識となり、暗黙の了解が暗黙の了解として通用しなくなることも珍しくありません。
日本のプロ野球選手にとって米大リーガーは雲をつんざく最高峰のような存在です。野茂英雄、イチロー、松井秀樹、ダルビッシュとて例外ではありません。
田舎の草野球で名をなし、富士山からエベレスト登頂を極めた雲の上の存在です。
しかしいずれも島国のプロ野球には通じていても米大リーグの、とりわけ暗黙の了解事項など知るよしもありません。
知らないからトラブルメーカーになります。有名なのはメッツで一時活躍した新庄剛志の例。
チームが五点以上勝っているときは相手投手のボールカウント0―3からの球をスイングしてはいけません。
8点差のマーリンズ戦で彼はこれをやり、翌日報復の死球を受けました。
ホームランを打った瞬間、ホームプレートに立ち止まって打球を目で追ってもいけません。
派手なオレンジリストバンドを着けて新庄はこれをやり報復の死球を見舞われました。
見せしめだ、ナルシストの見栄っ張り野郎、というわけです。
大リーガーの目には新庄の振る舞いは見栄を切る歌舞伎役者のようにみえるそうです。
右足をホームプレートに踏み出したイチローが二度死球を受けたのは相手投手より有利な条件で戦おうという狡い挑戦にみえたからだそうです。
心配のタネはヤンキースに移籍した田中投手です。ピンチを脱したときのあの雄たけびは大リーガーのプライドを傷つけ、乱闘事件になるのでは、と懸念されています。
※コラムの内容はコラムニストの個人の意見・主張です。