後藤英彦のぶっちゃけ放題!
第266回 難しい現代日本語の表記
2014-03-19
友人の一人、松岡八十次さんからメールが来ました。「変わりはありませんか。『異字同訓』、いい資料が手に入りました」。
以下は私の返し。
日本語のしゃべりは他国語と比べ容易なほうですが、記述になると「悪魔の文字になる」といいますが、確かにそう思います。
日本人各々が、送ってくれた異字同訓表をきちんと守ってくれたら、日本語の乱れを憂えることもないでしょう。
しかしそうやすやすいかないところが日本人のややこしさです。
ひらがなを書けば無学とみられ、バカにされると思い込んでいるご仁のなんと多いことでしょう。見栄に突き動かされて、やたらと漢字に走るのです。
その傾向は新聞(当用語を採用)を読まない人に多く、たとえば「なお、雨が降ってきたため」を「尚、雨が降ってきた為」と平気で書きます。
新聞を読まない日常がこんなところに表れるのです。
「文は人なり」、文章を書かせたらその人の総合力、教養のほぼ一○○%を把握できるというのは誇張ではありません。
数日後、松岡さんから再度、疑問のメール。「触れてはいけない事という表記を日刊サンで見つけましたが、「事」は漢字でいいのですか」。
以下は私の返し。
触れてはいけない事の「事」はひらがなの「こと」でなければなりません。しかし世間(週刊誌も)では「事」を使うし、誤用が黙認されて、容認されています。
触れてはいけない事の「事」は形式名詞と言われています。正式な名詞でないからです。
たとえば泣くことの「こと」、泣くときの「とき」、泣くものの「もの」、泣くうちの「うち」、泣くわけの「わけ」は形式名詞です。
しかし以下は名詞です。形式名詞でないから、事は重大、時は金なり、所狭し、物がない、内と外、訳が知りたい、などと表記できるのです。
メールの主、松岡さんは南加県人会協議会(当銘貞夫会長)の副会長幹事を務め書道をよくし、古代漢字学の白川静博士を尊敬しています。
※コラムの内容はコラムニストの個人の意見・主張です。