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コラム

現代社会ド突き通信
1945年以来核に怯えていた私 第五回

2014-03-28

 「もんじゅ」の事故の4年後、1999年9月30日に茨城県東海村にあるJCO東海事業所で臨界事故が起こった。新聞を読めば読むほど、原爆の悲惨さを知っている国がこんな杜撰さで核を扱っているのかと驚いたのは私だけではない。そんな時、日本に帰国していた我が儘だと私に言った友達が電話を掛けて来て「私たち、あの時、あなたに奇妙な人だと言ったけど、今度の事故であなたが正しかったと分かったわ」と謝ってきたのだった。
 この事故発生翌日の「LAタイムズ」に、南カリフォルニア大学のナジメデイン・メシュカテイ環境土木工学準教授がこう書いた。「事故の2週間前、日本での学会で、1966〜95年の間に通産省に報告された日本の原発事故や故障が863回あったと聞いた。49基の原発で起こった人的ミスは199。JCOで作業員が事故を引き起こしたのだと犠牲者のせいにするのは短絡的だ。事故はJCOの親会社である住友金属鉱山とあの工場の経営者の安全に関する文化セイフテイー・カルチャーによる。それは会社やそれを形成している個人が安全性を最優先にしているかどうかという点だ。従業員の人となりの必要条件は、何でも質問する、厳格で用心深く、よくコンミュニケートする人がよい。しかし、往々にして作業場のレイアウトが悪く、複雑な運用操作、不完全な整備、過剰な仕事量、人員数・訓練・働く意欲・経験の不足、経営責任者の無責任さ、無計画性、適当な報酬制度がない、無秩序な反応組織といった多くの要素で事故が起こっている」
 また同紙は「この事故は、最近続けさまにあった火事、放射能漏れなどの事実を偽って報告するという挙句に起こった事故である。国際グリーンピースのショーン・バーニーは“東海村の事故は我々の恐怖を新たにした。日本のセイフティー・カルチャーは危機に瀕している。(ブルーサーマル計画によって)危ないプルトニュームを原発で用いるのは核の大惨事を大にするだけ”と、話した」と書いている。
 10月2日の「NYタイムズ」の社説はこう指摘する。「臨界事故はかつて米国でもよくあった。1945年から64年までの20年間に原発ではなく燃料工場で一年に一回は起こっていたが、78年以後はゼロである。核技術者がより安全なデザインを施し、技術者が慎重に扱うことをまなんだからだろう。でも事故が起こらないとは言えない。日本政府は以前起こった核事故を隠蔽する傾向があると言われているが、問題の多い企業を救済し、人の信用を得ようと思うのなら、今度の東海村で何が起こったかを素早くあらいざらい公開すべき」


 当時、私は電話をかけ回って核物理学者が余りいなかったのに驚きました。


 UCLAもだめ、カル・テク(California Institute of Technology)もだめで、カルテックの人がMIT(Massachusetts Institute of Technology)にいるかもしれないと教えてくれて掴まえたのが、マイケル・ゴレイ教授(核工学)「ステレオタイプに考えて悪いのですが、日本人は規則を厳守し日本政府もとても用心深いのになぜこのような事故がおこったのかと驚きました。この事故は他の核関連事業にとても悪影響を及ぼすでしょう。
 79年のスリーマイル島原発の炉心溶融事故の後、米国では原子力発電運転協会INPOが形成され、操作訓練、核安全保持や検査に力を入れるようになりました。米国政府の原子力規制委員会NRCから原発には二人検査員が常勤しています。核燃料工場には常勤はいませんが、JCOの事故は知的に判断して行動していれば防げたと思うので呆れたのです。
 僕が日本にいたならば、INPOのような組織をつくり安全を先ず最初に確保するでしょう。チェルノブイリの後、世界的組織としてINPOのような世界原子発電事業者協会WANOが組織されました。日本にその支部がある筈です。この組織は核企業を改善するのを助けます。日本の問題は組織を変えるのが遅いことです。事故が起こっても隠していると人を危険に晒すだけです。こういう事故を起すと企業に不利になるから、米国人ならば安全な運営をしようと改めます」。

 “憂慮する科学者同盟”の核安全工学者、デイビッド・ロックバウムはエネルギー政策転換の重要性を指摘した。「東海村、チェリノビリ、スリーマイル島―すべて事故の原因は人的ミスです。また将来の事故もこのようにして起こると思う。今までの事故の率があまりにも高過ぎるからです。企業主とか政府の責任者の独善性のためです。
 米国では91年に核燃料工場で事故が起こりかけ、直後に原子力規制委員会が二つの偶発性を避ける安全確保の仕組みを主張するようになりました。一つは処置法と手順の訓練(JCOには欠けていた)、もう一つは、米国の核燃料工場ではウランの量が多すぎた場合、それが入らないようなタンクの設備です(これもJCOになかった)。米国のこの手段で完全に事故を防ぐとはいえませんが、少なくなることは確かです。また各企業の周辺のコミュニテイでは効果的な緊急避難訓練が絶対必要です。将来のエネルギー源は、太陽熱、メタンガス、バイオマス、地熱に変えるべき」。 

 ワシントンの原子力情報資料サービスの原発監視企画長のポール・ガンターは事故の背景をこう説明する。
 「東海村の事故は時間を節約するために起こった事故です。日本だけでなく米国でも他の燃料との価格競争で安く上げようと燃料工場だけではなく原発でも手抜きをしていました。将来人的ミスがこの危険な材料を扱う場所で起こることは必然です。設備が古くなり、安全性が低くなり、企業が規制を緩めるように政府に圧力を掛けている。この二点で災害が起こり易くなっている。
 東海村は緊急訓練をしていなかった。適当な放射能検出器がなかった。絶対起こらないと思っていたのでしょう。検出器が無かったためどれだけの放射能が漏れたか分からないし、建物が密閉されていなかったから希ガスや希ガスから発生したストロンチュム、セシウムなど放射性物質が漏れたはずです。ロビー活動で馴れ合っている企業と政府の責任だと思います」。
          (つづく)


※コラムの内容はコラムニストの個人の意見・主張です。
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米谷ふみ子




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