後藤英彦のぶっちゃけ放題!
第267回 和牛専門店の米開業で思うこと
2014-03-26
全農和牛の専門店「四季ビバリーヒルス」が四月六日、ビバリーヒルスで開業します。
全農和牛(岩手、群馬、宮崎、鹿児島産)の美味を米国に広げ、日本の需要減に対応する狙い。
世界の肉牛市場は年三億頭でUS和牛、豪州和牛を除く日本産和牛のシェアは○・○○一七%、五十万頭。
四季はランチ六十㌦、ディナー百㌦、売上げ今年百五十万㌦、来年二百万㌦を目指します。
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親会社・JA全農の中野会長、小原常務らが開いた記者会見で「日本車が現地生産で活路を開いたように、米国で和牛を大規模現地生産する気はないか」と問うと、「それはない」という。
なぜなら「畜産農家の利益が第一」だから、現地生産は農家のためにならないという論理。
通産省から農林省に取材先を移した現役時代(四十年前、時事通信)に痛感した挑戦なき姿勢に、ここで出遭うとは思ってもいませんでした。
アグリビジネスの米国農業に対し、日本の個別畜産農家がどうして国際競争に勝てるのか。
畜産農家を大規模化、小を捨て大につく。挑戦なくしてどうして未来が開けるのか。
米国のモンサント社に太刀打ちできるビジネス機会を作ることこそ全農の使命ではないのか。
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全農を責めるわけではありません。監督官庁・農水省の省益追及の保守姿勢こそ問題なのです。
勘ぐれば畜産農家の大企業化は農水省から経産省に所管を替える。農地、森林を住宅地に転用すれば国土交通省に所管替えになる。
農家第一に動くほど省益を損なう矛盾。だから挑戦しない。同省と農家間で苦悩するJA全農。
官庁機能の矛盾を衝くTPPに対応し現地生産や多角経営を急ぐべきだ。日本の得意分野はたくさんある。二○二五年に世界人口の三分の二が水不足に陥るという。
例えば豊富な日本の水を経産省の壁を越え世界市場に売ったらどうか。
日本の前進を阻む官庁の縄張り争いを指弾し、水の輸出で活路を見いだすという発想はどうか。
※コラムの内容はコラムニストの個人の意見・主張です。