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コラム

後藤英彦のぶっちゃけ放題!
第277回 五一五事件の三上卓との奇縁 

2014-06-04

 喜劇王チャプリンと高野虎市、二十九代総理犬養毅と三上卓、名前を羅列しただけでは何のことかわからないかもしれません。
 四者は実はただならぬ関係で、高野はチャプリンの秘書(十八年間)、三上は犬養を殺した青年将校のリーダー、なのです。
 チャプリンは訪日四回という親日家で、一九三二年五月十四日に初来日を果たしています。
 満州事変のせいで日本は当時、国際的に孤立、チャプリンは到着早々「緊張緩和に役立ちたい」と犬養に面談を申し込みました。
 彼が犬養に会うと知った青年将校は「二人ともやっちまえ」と意気込んだ模様です。
 不穏な動きを察知した高野、東京駅から帝国ホテルに向かう車中で、チャプリンに皇居に向かって遥拝するよう求めました。
 車から降りて彼は宮城に向かって頭を下げました。青年将校に好印象を与えるための高野の演出でした。
 翌日三上中尉ら青年将校は官邸に突入、犬養を殺害します。史上名高い五一五事件です。
 犬養の死で面会は流れ、チャプリンは後継総理の斎藤実と後日、会ったそうです。
 日本の何もかも好きな彼でしたが、とりわけ浜町「花長」のエビ天がお気に入りで、大型くるまエビを三十匹食べた記録が残っています。
 
学生時代の筆者は佐賀県営の学生寮(渋谷区松涛町)に入寮、「大学ふすま研究会」を仲間と作り、ふすま張りをアルバイトにしていました。
 夏休みの一ヵ月ほどを職人の助手として仕え技術を習得後、学業の合間、ふすまを張りました。
〝安い値段・学生ふすま張り″が受けて「東大ふすま研究会」とともに話題を二分しました。
 六三年晩夏・某日、練馬・椎名町の住人から「二十四枚張ってくれ」と注文が入りました。
 注文主は三上卓。仲間と行くと、やはり眼光鋭いあの三上卓。ガランとした日本間に黒塗りの机三つ四つ。妻女の姿など見えませんでした。
 三上が一枚かんだ未遂クーデター三無事件(一九六一年)の二年後のことでした。

 


※コラムの内容はコラムニストの個人の意見・主張です。
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後藤英彦

一九六四年時事通信社入社。旧通産省、旧農林省、旧大蔵省を担当後、ロサン
ゼルス特派員。本社海外部次長。途中希望退社して盛岡大学客員教授、評論活
動。二度目の来米でジャパン・ジャーナルを主宰。講談社、エルネオス系を中心
に寄稿中。主著に「日本をダメにした官僚の大罪」(講談社)。中大法学部法律
学科卒業。福岡県出身。グレンデール在住。

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