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コラム

後藤英彦のぶっちゃけ放題!
第285回 ブラピの場合、田中角栄の場合

2014-07-30

これまで幾度も会っているのに名前を覚えてくれない人がいます。名前どころか顔さえ覚えてくれない人もいます。
この人、少々脳に異常があるのでは、と余計な心配をします。
米誌『エスクワイア』のインタビューで、人気俳優のブラッド・ピットさんが『相貌失認(そうぼうしつにん)の疑いで僕は悩んでいる』と打ち明けました。
相貌失認は顔を識別できない脳障害の一種。
『僕は多くの人に失礼な人間と思われ嫌われている。覚えがないのでどこで会った?と尋ねると、思い上がった奴だと人を怒らせてしまう』。
対人関係は悪くなるばかりだそうです。

これと思った官庁与党詰め記者、主要官僚、財界人、地元選挙民らの顔と名前を一万余覚えていたという田中角栄元首相(一九七二~四年)の生き様を思い出しました。
あるとき彼の秘書に『田中さんは人を覚える名人と聞く。秘訣があるか』と尋ねてみました。
秘書は『当面、記事にしないでほしい』と前置きし、ためらいながら次のように話しました。
『田中先生は人の顔と名前を覚えることにとても強い信念をお持ちです。人を知らずに人の世で成功するはずがないとお考えです』
『面会相手の名前を反復しつつ話されます。名前を何度も呼ぶことで記憶にとどめようとなさるのです』
『相手が帰ると名刺の裏にその人の特徴を書かれます。声の質、仕草、目、鼻、口、あご、ほくろその他の特徴・・。この方法は美智子妃も若いころからなさっていると伺っています』
『秘書に命じて訪問客と一緒に写真をとられます。あとで記憶の確認に使うためと、訪問客に写真を送って喜んでもらうためです』
『大切な訪問客の名刺を机上に並べ、常に秘書を交えて顔と名前のおさらいをなさいます』
田中元首相はロッキード事件に連座、犯罪人になりましたが、誰からも大変愛されました。
一度の面会で沢山の人を覚えるという空前絶後の努力が、彼の人気を支え続けたのです。


※コラムの内容はコラムニストの個人の意見・主張です。
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後藤英彦

一九六四年時事通信社入社。旧通産省、旧農林省、旧大蔵省を担当後、ロサン
ゼルス特派員。本社海外部次長。途中希望退社して盛岡大学客員教授、評論活
動。二度目の来米でジャパン・ジャーナルを主宰。講談社、エルネオス系を中心
に寄稿中。主著に「日本をダメにした官僚の大罪」(講談社)。中大法学部法律
学科卒業。福岡県出身。グレンデール在住。

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後藤さんのブログ http://blogs.yahoo.co.jp/jajala816




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