Alice in WINEderland
vol.63 Far Niente
2014-09-04
オーパス・ワン、シルバーオークに続き、日本のカリフォルニアワイン通の間で比較的認知度が高いとされるファー・ニエンテ。ゴールドラッシュの流れとともに、ナパに移り住んだJohn Benson氏が1885年に設立した、エリアでも非常に歴史の長い老舗ワイナリーである。1919年に開始した米国の禁酒法により、しばらくの間、閉鎖となっていたが、1979年にGil Nickel氏がこの土地を購入したことをきっかけに再びワイナリーが稼働し始めた。現在、ワイナリーの建物は、歴史的建造物に指定されている。
ファー・ニエンテという名前は、イタリア語のフレーズのDolce far nienteという言葉の far niente 部分を引用したもので、英訳ではDelicious idleness、日本語に意訳すると、「ありのままの」または「真似のできない」という意味があるとのこと。ナパの土壌の特徴を美しく表現した伝統的なカリフォルニア・スタイルのシャルドネとカベルネ・ソーヴィニョンを主なラインナップとし、ロサンゼルスのハイエンドレストランにも多くリスト入りしている。鮮やかな黄金色のシャルドネは、熟したシトラスフルーツに、オークに由来する優しいバニラ香が特徴的である。また、カベルネ・ソーヴィニョンも同じく、熟成した赤と黒の果実に、ラベンダーやセージを思わせるハーブ香、そして上質のココアのような奥行きのある味わいが楽しめる。
また、忘れてはならないのが、姉妹ワイナリー、ニッケル&ニッケルとドルチェ。ニッケル&ニッケルは、オーパス・ワンに隣接する畑の葡萄を使用しており、本家特有の凝縮した果実味系と、オーパス・ワンのような深み系のちょうど中間地点に位置づけられ、姉妹ブランドとはいえ、本家より高値で取引されることも少なくない。また、ドルチェは、ソーヴィニョン・ブランとセミヨンのブレンドで造るデザートワインを専門としており、貴腐葡萄を使用する伝統的なソーテルヌの手法をナパで再現したパイオニア的存在である。
※コラムの内容はコラムニストの個人の意見・主張です。