後藤英彦のぶっちゃけ放題!
第296回 格言「為せば成る」が腐敗源?
2014-10-15
「為せば成る」ほど勇気や希望を持たせてくれる言葉はありません。
そこには苦しい状況でも、最善を尽くせば苦境を乗り越えられるとの前向きの意思が込められています。
英語のWhere is a will, there is a way.に当たります。
しかし「為せば成る」には副作用があって、目的のために手段を選ぶ必要はないとの結果オーライの風潮を生みます。
要領のいい人、方便を使う人、どんな手段を使ってでもやり遂げる人が、有能であるかのようにもてはやされ出世します。
韓国社会の腐敗のほとんどは「為せば成る」がもたらした要領・方便主義のせいだ――以上の論旨が「朝鮮日報」のコラムに載っていました。
「朝鮮日報」はさらに記述を進め、旅客船・セウォル号沈没事故は、韓国社会に浸透している要領・方便主義が絡み合って引き起こした典型例だと指摘しています。
検査機関は検査機能をなさず、会社は公人と癒着、私腹を肥やすだけ。
同紙は「結果よければすべて良し」の風潮が、腐敗源なのはこの悲劇で証明されたとし、もう「為せば成る」は捨てるべきだと訴えています。
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「為せば成る」は中国の史書「書経」に書かれた「為さずんば、何ぞ成らん」から採られた言葉だそうです。
江戸後期、米沢藩主の上杉鷹山が「書経」に学び「為せば成る、なさねば成らぬ何事も、成らぬは人の為さぬなりけり」と詠み、家臣に与えたと伝えられています。
これより以前、武田信玄が「為せば成る、為さねば成らぬ、成る業(わざ)を成らぬと捨つる人のはかなさ」と詠んでおり、鷹山の歌は信玄の韻旨を踏まえています。
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「為せば成る」は精神論で、人の灯台であるとともに闇夜になりかねません。今の日本人の常套句、「頑張るしかない」と用法上似ています。
悪のはびこる現代社会で「頑張るしかない」と断固突き進めば、悪魔と折り合いをつける以外ありません。
「結果よければすべて良し」は韓国だけの問題ではないようです。
※コラムの内容はコラムニストの個人の意見・主張です。