後藤英彦のぶっちゃけ放題!
第302回 平成天皇のアドリブ挨拶
2014-11-26
天皇は神か人間か。戦前は『現人神』だった。
マッカーサーが神ではないといった。敗戦翌年一九四六年の元日、昭和天皇は自分の神格を否定、『人間宣言』をした。
九四年六月、次の平成天皇がロスの日系敬老ホームを慰問した。
妙中理事が『お上のご挨拶を』と宮内庁等に懇願したが、『時間がない』と断られていた。
天皇は慰問当日、威儀を正した老人らに手を振り微笑を返した。
司会役の妙中氏、『陛下、お言葉を賜りますれば』と死ぬ気でマイクを向けた。
天皇は自分の意思で話し始めた。官僚の文章を読むのが天皇の挨拶だ。側近は仰天した。天皇の、史上初の挨拶アドリブ(原文)はこうだ。
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『この度米国を訪れた機会にロサンゼルスにおいて、皆さんとお会いすることができたことを大変うれしく思います。
こちらへは先程お話がありましたように、訪れる予定になっておりましたところを昭和天皇のご病気で訪問することができなくて大変残念に思っていたところですが、この度ここを訪れることができたことを大変うれしく思っております。
先程は日系人の博物館で、皆さんが経てきた道の一端に触れることができました。
さまざまな苦労があったこととお察ししております。
しかし皆さんが戦後、力を合わせて社会のために立派に尽くされ、日系人の人々が米国の国民の中で大きな役割を占めてきているということを大変頼もしく、またうれしく思っております。
ここに皆さん方のご苦労に対し深く敬意を表したいと思います。
皆さん方にはくれぐれも体を大切にされ、今後とも元気に過ごされますよう願っております。
また、このような歓迎の催しをしていただき、賜り物をいただきましたことに対し、深く感謝いたします』
原文は生田観周師の筆で敬老ホームに書き残されている。
挨拶アドリブを天皇から引き出した故妙中氏の執念を、天皇誕生日(十二月二十三日)のたびに思い出している。
※コラムの内容はコラムニストの個人の意見・主張です。