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コラム

後藤英彦のぶっちゃけ放題!
第304回 バイオリン人生いろいろ

2014-12-09

父はバイオリンを上手に弾いた。
年代もののバイオリンを持っていた。アマテイーと呼んでいた。
十六世紀イタリアのバイオリン製作者の名前だ。偽物(可能性大)でなければ三千万円をくだらないだろう。
食事を済ませた夕暮れどき父は、いつも縁側のイスに座ってバイオリンを弾いた。
小品の『ユーモレスク』とか『スブニーエル』とかを好んで私に弾いて聴かせた。
幼少の思い出は縁側でバイオリンを弾く若い父の姿だ。
アメリカ暮らしは二十年を超えた。父母に寂しい思いをさせた。九三年十二月、妹に看取られ父は死んだ。例のアマテイーを本物と自分に言い聞かせて・・。

今年二月のこと、ミルウォーキー管弦楽団のコンサートマスターが暴漢数人に襲われた。
バイオリンの王様、ストラディバリウスが強奪された。被疑者三人を逮捕したが、肝心のバイオリンの行方はようとして知れない。
約六百丁現存しているストラディバリウスは、イタリアの弦楽器製作者A・ストラディバリ(一七三二年死去)の史上最高傑作とされる名器。
東日本被災者救済のチャリテイ―・オークションで、ストラディバリウス一丁に一千五百八十九万㌦、一㌦百十五円換算で十八億二千七百万円もの値がついた。
ストラディバリウスは音もいいが値も法外にいい。庄司紗矢香は一七一五年製を日本音楽財団からリースしている。
五嶋みどりもストラディバリウスと並び称されるガルネリを林原共済会から借りている。
五嶋みどりにはエピソードがある。
演奏中にE線(スチール弦)が二度切れるハプニングに見舞われた。コンサートマスターのバイオリンを借りて弾いた。
するとE線がまた切れた。副コンサートマスターのバイオリンを借りて弾き終えた。
指揮者バーンスタインが驚愕、絶賛した。ニューヨークタイムズも一面トップで取り上げた。小学校の教科書にも載った。
当時十四歳のみどりは一躍、神童になった。


※コラムの内容はコラムニストの個人の意見・主張です。
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後藤英彦

一九六四年時事通信社入社。旧通産省、旧農林省、旧大蔵省を担当後、ロサン
ゼルス特派員。本社海外部次長。途中希望退社して盛岡大学客員教授、評論活
動。二度目の来米でジャパン・ジャーナルを主宰。講談社、エルネオス系を中心
に寄稿中。主著に「日本をダメにした官僚の大罪」(講談社)。中大法学部法律
学科卒業。福岡県出身。グレンデール在住。

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後藤さんのブログ http://blogs.yahoo.co.jp/jajala816




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