後藤英彦のぶっちゃけ放題!
第335回 人名、国名のカタカナ書き
2015-07-23
画家ピカソのフルネームから始めよう。
パブロ・デイエゴ・ホセ・フランシスコ・デ・パウラ・ホアン・ネポムセノ・マリア・
デ・ロス・レメデイオス・クリスピン・クリスピアノ・デ・ラ・サンテイシマ・トリニダード・ハイス・ピカソ。
尊敬する先祖の名前をずらりと並べ、彼らの人格や能力にあやかろうという寸法のよう。
『長いばかりで能がねえ。こんなの、覚えられないよ・・』
だから彼は名前の頭と尻尾を採ってパブロ・ピカソと名乗っていた。
こんなことがあった。八○年代初め、駐日米国大使館からのお達しで、『大統領の名前はリーガンじゃない。レーガンだ。改めて』と言う。
新聞、雑誌、テレビ等はこぞってレーガンと改めた。
明治期はひどかった。
西洋人と会話接触などなかったから、ワシントンはワシングトン、リンカーンはリンコルンと呼んでいた。
オランダ語読みでやるから自然とそうなった。天才小説家ゲーテはギョエテと言った。
Goetheのoe部分はウムラート発音で、ゴーテとゲーテの中間ぐらいの発音になる。
文字面だけで決めるからギョエテとなった。
『ギョエテとはおれのことかとゲーテ言い』は斉藤緑雨の傑作川柳だ。
明治元年生まれの変人、緑雨は『僕は本月本日をもって目出度く死去致し候間、この段広告を残し候なり』という広告を残している。
国名、地名の片仮名書きにも問題がある。
ロシア語起源の国名グルジアを英語読みのジョージアにせよと言う。
ロシアの侵攻を受けた○八年の反発が国名の変更運動になった。
文字派と耳派に分かれることもある。例えば文字派はトーランス、耳派はトーレンスと言う。
LAもロス・アンゼルス、ロスアンジェルスいろんな呼び方がある。
英語をカタカナに直すこと自体、無理がある。
日本の国語審議会とマスコミ懇談会はロサンゼルスで統一している。
※コラムの内容はコラムニストの個人の意見・主張です。