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コラム

後藤英彦のぶっちゃけ放題!
第336回 米国在住の邦人の命を誰がどのように守るか  =LA総領事館の回答=

2015-07-30

米国在住の邦人(日本人)の命を誰がどのように守ってくれるのか――。
安倍内閣が憲法九条解釈を改め米軍を後方支援する方針だ。専守防衛の自衛隊が集団的自衛権を正当化し、戦闘中の米軍に燃料、武器、弾薬の運搬、補給やシーレーンの確保などに当たるという。
安倍内閣は国際関係の緊張、変化を理由に、抑止力強化こそ日本の平和を守る道と主張している。
しかし集団的自衛権の行使によって、米軍と敵対する勢力や過激派等によって自衛隊が攻撃されることが当然考えられる。日本が戦争に巻き込まれる可能性が出てくる。
そればかりか米国在住の邦人が米国に敵対する勢力の憎悪の対象となり、その生命、財産が侵される事態も起こり得る。米国在住の邦人に危険が及ぶとき日本政府はどのように守ってくれるのか。ロサンゼルス在日本国総領事館に訊いた。

問1  米国在住の邦人に何かあった場合,誰が責任を持って保護,救助活動をするか。周知のごとく総領事館が邦人保護に一義的責任を持っている。
  しかし総領事館の手に負えない事態が生じたときに、誰がどこまで邦人の安全確保に責任をもって事に当たるのか。
(答)  在外邦人保護は我が国政府の重要な責務であり、海外で緊急事態が発生した場合、在外公館は邦人保護を初めとする緊急事態対応の最前線になる。
   在外公館は邦人保護の最後の砦として、事態の情報収集及び邦人への情報提供、邦人の安否確認、そして現地当局と連携して邦人の保護を行うことになる。
   一方で,国際法上,自国領域内に所在する外国人の保護は当該領域国の義務であるため、ご質問のケースに関しては、我が方の公館が米国の警察当局等の関連機関と緊密に連携して邦人の安全確保を行うこととなる。

問2  ワシントンの大使館もしくは総領事館の要求により、米連邦あるいは州政府等の兵が出動、日本人の生命、財産等を確実に守る体制になっているか。
(答)  在米日本国大使館及び総領事館は、日頃より米国政府との間で緊密に連携してきており、緊急事態の際にはその具体的状況に応じて、米国政府関係機関との間で適切に協力を行う。

問3  自国民の安全確保を確実にするため自衛隊による緊急PKO活動が速やかに承認される体制になっているか。
(答) 「自衛隊による緊急PKO活動」がいかなるものかを含め、ご質問の趣旨が必ずしも明らかでないが、緊急事態における在留邦人の輸送のための自衛隊派遣については、自衛隊法において、「防衛大臣は,外務大臣から外国における災害、騒乱その他の緊急事態に際して生命又は身体の保護を要する邦人の輸送の依頼があった場合において、当該輸送において予想される危険及びこれを避けるための方策について外務大臣と協議し、当該輸送を安全に実施することができると認めるときは、当該邦人の輸送を行うことができる」と定められている。
   なお、現在国会で審議されている「平和安全法制」において、自衛隊が法定された用件の下で在外邦人等の保護措置をとることを可能とする自衛隊法の改正案が含まれている。 

問4  海外邦人の安全に関する国際協定もしくはそれに類する日米取決めもしくは適用法はあるのか。
(答)  日米政府間において米国在留邦人の安全確保に特化した国際約束はない。

問5  緊急.即応手段を持ち合わせていない場合、どうすれば邦人の生命,財産を守ることが出来ると思うか。
(答)  在外邦人保護は我が国政府の重要な責務であり、その時点で考えられるあらゆる手段を講じて邦人の保護に全力を尽くすこととなる。
   一方で、自国領域内に所在する外国人の保護は国際法上当該領域国の義務でもあるため、領域国の警察当局等関連機関が行う治安の維持活動等と緊密に連携して邦人の安全確保を行うこととなる。


※コラムの内容はコラムニストの個人の意見・主張です。
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後藤英彦

一九六四年時事通信社入社。旧通産省、旧農林省、旧大蔵省を担当後、ロサン
ゼルス特派員。本社海外部次長。途中希望退社して盛岡大学客員教授、評論活
動。二度目の来米でジャパン・ジャーナルを主宰。講談社、エルネオス系を中心
に寄稿中。主著に「日本をダメにした官僚の大罪」(講談社)。中大法学部法律
学科卒業。福岡県出身。グレンデール在住。

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