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コラム

後藤英彦のぶっちゃけ放題!
第340回 時代が決める美人の条件

2015-09-03

明治の美女、陸奥(むつ)亮子は伊藤内閣の外相、陸奥宗光の後妻に迎えられた女性だ。
日清戦争等の内実を書いた夫・宗光の『ケンケン録』は、私の友人Gバーガー元USC教授の手で英語翻訳された名著。
亮子は没落旗本家に生まれ芸者屋に売られ宗光に見初められて結婚、その美貌は『鹿鳴館の華』と称えられた。
明治の政治家は美女に弱かった。
伊藤博文も木戸孝允も大山巌も美人芸者を後妻にしたが、なかでも亮子の美名は高かった。

朝日新聞(明治二十年三月二十日)は『時代で変わる美人の条件』を次のように書いている。
『天保弘化(一八三○~四七年)の時代には顔の長うて、目の張りがようて、生え下がりの毛が長うて、背の高い女でのうては美人と言えず』
『明治初年にありては、顔は丸く目は常態で少しまなじりの釣りあがり、髪は黒うて背の小柄でのうては当世風ではないとて、いわゆる丸ポチャ顔の流行せしが。時の勢いとは言え、はて妙なもの』
江戸の明和(一七六四~七一年)三美人と謳われた美女がいた。
江戸時代のブロマイドといえば錦絵。そこに描かれた美少女第一号は笹森お仙。
抱きしめれば折れそうで顔は幼さの残るあどけなさ、と伝えられる。谷中・笹森稲荷の水茶屋の娘、お仙を描いた絵師が鈴木春信だった。
春信の絵は大評判となり、お仙グッズの手ぬぐいや双六になった。
お仙にライバルがいた。浅草寺境内の楊枝屋・柳屋の看板娘、柳屋お藤と浅草寺・二十軒茶屋の水茶屋・蔦屋の看板娘、蔦屋およし。
それから二十年後、鳥居清長の描く美女はお仙らより眉がぐっと濃くなる。目は切れ長で口元に愛嬌が出る。
さらに十年後、喜多川歌麿のグラマー八頭身、寛政三美人が登場する。
浅草寺・茶屋の難波屋おきたと両国・煎餅屋の高島屋おひさ、吉原遊郭の芸者、富本豊雛。
冒頭の陸奥亮子はうりざね顔に涼しいくぼんだ目。鹿鳴館出入りの欧米人にもてたのは洋風趣味の反映だろうか。


※コラムの内容はコラムニストの個人の意見・主張です。
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後藤英彦

一九六四年時事通信社入社。旧通産省、旧農林省、旧大蔵省を担当後、ロサン
ゼルス特派員。本社海外部次長。途中希望退社して盛岡大学客員教授、評論活
動。二度目の来米でジャパン・ジャーナルを主宰。講談社、エルネオス系を中心
に寄稿中。主著に「日本をダメにした官僚の大罪」(講談社)。中大法学部法律
学科卒業。福岡県出身。グレンデール在住。

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