今月の庭仕事
Lesson 146 頭の夏休み「巻く」という事象について
2015-08-19
春先からよく働いてくれた家庭菜園も、秋に始まる冬野菜の準備で忙しくなる前の小休止の体です。家庭菜園という小さな世界でもよく観察してみると興味深いことがたくさんあります。今日は“頭の夏休み”ということで、その辺りを耕してみましょう。
この地球上には「巻く」という事象が植物、物体、自然現象などによく見られます。この夏に私が経験したのは山芋です。
山芋が出てくる前に竹の支柱を5インチくらい離したところに立てました。出てきた芽はまっすぐ伸びますが、しばらくするとその先端は必ず支柱の方向に向かってなびいていきます。そうして例外なく支柱の右側に取り付き時計回り、すなわち右巻きの状態で登っていきます。これは芽が出た時に左側に近いところに立てた支柱でも最終的には右側に取り付きます。つまり人為的に左側に誘導しても右巻きになってしまいます。
物の本によると右巻き左巻きの性質は遺伝子の中に組み込まれているということですが、つるが巻き出す前に、どこかに支柱や巻き付くものがあるのを探し出すセンサー・感知能力がどのように作動するのか、巻き方以上に不思議です。私の山芋の場合、支柱までの距離は5インチくらいでしたが、この距離を少しずつ遠くしていったら、どの辺までその影響力の範囲以内なのか、面白い実験になるかと思います。
そしてもっと面白いのはその原理をつきとめ、科学的に発展して応用できたら、今もってどこにいるのか分からない行方不明の旅客機などを発見できるできるかもしれません。
さて“頭の夏休み”ということなので他の自然現象を見てみましょう。ご存知のように台所で流す水は北半球では左回りで、南半球だとその反対です。多くの被害をもたらす台風も巻き方も同じです。北で左、南で右。この恐ろしい台風ですが、赤道の南側で発生したものを北側に押しやったら、右回りの力、左回りの力がお互いに相殺して自然消滅するのでしょうか。面白い課題です。
秋ももうすぐそこまで来ています。そろそろ冬野菜の準備に取り掛かりましょう。ちなみに、山芋は支柱が高くなればなるほど、すなわち葉に多くの太陽が当たれば当たるほどよくできます。
■今回のコラムニスト:南加庭園業連盟会員の白澤まことさん。連盟主催の野菜セミナーで講師を務める。NTB「チャレンジ・ザ・ガーデニング」出演の経歴もあり。
※コラムの内容はコラムニストの個人の意見・主張です。