今月の庭仕事
Lesson 156
2016-01-07
明けましておめでとうございます。今年も家庭菜園をテーマに書かせていただきます。
今回は、多くの人が挑戦したがらない「果樹の接ぎ木」についてです。もうすぐその時期になります。
接ぎ木とは2つの似通った種類の品種を1つの植物に育てることで、例えば、オレンジの木にタンジェリンを接いで1つの木として育てます。1本の木に他に2、3種の品種を接いで楽しむこともできます。南カリフォルニアでよく育つアボカドの木にハースの小枝を接いで栽培するのもその一例です。 一見、接ぎ木は非常に手のこんだ技術のようですが、少しの要点を抑えてそれを忠実に守れば簡単にできます。接ぎ木をする理由については次回に。
注意する点は、適当な時期、台木(接ぎ木される本体)と穂木(接ぎたすもの)の形成層を的確に合わせること、作業完了後の養生環境です。準備するものは、非常によく切れるナイフ、適当な幅でよく伸びるテープ、水が入るのを防いで接ぎ木の乾燥を防ぐシールです。
適当な時期は、台木の中で水分や栄養分が動いている時期(春と秋で、秋は芽接ぎです)で、穂木は理想的には樹液が動き出す前のものを利用します。これは、台木の樹液が充分に穂木の乾燥を補えるだけの量が必要だからです。
切った切断面が滑らかでないと台木と穂木の間の樹液の受け渡しが上手くできないので、よく切れるナイフが必要です。これは両方の癒合組織がくっついて初めてできる機能なので、よく切れないナイフだと表面が凸凹になり癒合するのに時間がかかります。ここで強調したいことは、接ぎ木では“時間”がものをいいます。形成層で細胞が分裂して癒合組織を作るので、両方が合わさってないと距離ができ、時間が経つうちに穂木が乾燥して死にます。
形成層の箇所は、木部と皮の部分の中間で、細胞の厚さが一つか二つなので、丁寧にピッタリ合わせないと失敗します。形成層のすぐ内側が木部で根から水分と肥料分を運び上げます。その外側は葉でできた栄養分を下ろします。この養分で癒合組織(くっつける仕事)ができます。
接いだ部分を紐などで巻くとキツくなりがちなので、必ず延びるテープを使ましょう。狭くてキツいと、新しい細胞が産まれにくくなるからです。
穂木の乾燥を防ぐにはテープで巻いた後にビニールなどの袋を被せましょう。または陰を作ってください。鉢などに入っている場合は、半日ほど陰で休養させます。乾燥した強い日光と風は大敵です。接ぎ方はいろいろありますが、次回に。
■今回のコラムニスト:南加庭園業連盟会員の白澤まことさん。連盟主催の野菜セミナーで講師を務める。NTB「チャレンジ・ザ・ガーデニング」出演の経歴もあり。
※コラムの内容はコラムニストの個人の意見・主張です。