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コラム

後藤英彦のぶっちゃけ放題!
第364回 社会人五○年、知友の死に思う

2016-03-03

知友の遠ざかる足音。
東部からオレンジ郡に居を変えた鈴木康彦氏が電話で「親しい友三人に次々死なれ・・」と悲しげに言った。
名門バージニア大学等で教授を務めた同氏には「アメリカの政治と社会」「注釈アメリカ合衆国憲法」等の代表著書がある。
ケース・メソッドを駆使した近刊の「アメリカ憲法概説」は名著の誉れがとりわけ高い。
日米自動車摩擦の往時、日本車の代弁者として連邦議会に立った人だ。
中大法科を出てジョージタウン法科大学院を卒業した。
法曹界の一翼を担う中大法科のクラスメイトや同窓には、弁護士、検事、判事、法律学者、政治家の知友が多く鈴木氏もその一人だ。
クラスメイトの若林郁行君はスタンフォード法科大学院に留学し日米の弁護士免許を取得、当地に出張しては私を誘って痛飲した。
拙著「日本をダメにした官僚の大罪」を出した二○○一年十月、急ぎ新刊を彼に発送した。
六日ほど経って東京の若林法律事務所に電話をかけると愕然とした。本の着いた当日の朝方、彼は心臓発作で急死したという。
全身の力が抜けた。
同じクラスメイトの藤本哲也君は中大教授をしていた。バークレーに留学、のち「犯罪学」の権威となり、当時は司法試験審査委員を務めていた。
若林君の若すぎる死を悼む席で「若林は禅の大著に取り組んでいた.僕も一年一冊を目標にしているが」と彼は言った。
時事通信社佐賀支局時代、県議を経て衆院議員、経企庁長官を務めた愛野興一郎氏と佐賀県警本部長から警察庁刑事局長に栄転した中平和水氏の知遇を得ていた。共に中大法科の先輩だった。
二人の死を聞いた夜は寝付けなかった。
時事通信同期入社の田宮君とは同じ社宅に住んだ。ブリュッセル特派員の時に自殺したが、あの日も寝付けなかった。
同期入社二年後に退社した山元清多君は脚本家として大成したが、五年前肺がんで死んだ。
彼の劇団「黒テント」を観てくれと誘われていたが果たせなかった。寂寥感は鈴木氏と同じだ。
 


※コラムの内容はコラムニストの個人の意見・主張です。
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後藤英彦

一九六四年時事通信社入社。旧通産省、旧農林省、旧大蔵省を担当後、ロサン
ゼルス特派員。本社海外部次長。途中希望退社して盛岡大学客員教授、評論活
動。二度目の来米でジャパン・ジャーナルを主宰。講談社、エルネオス系を中心
に寄稿中。主著に「日本をダメにした官僚の大罪」(講談社)。中大法学部法律
学科卒業。福岡県出身。グレンデール在住。

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