後藤英彦のぶっちゃけ放題!
第379回 弁舌の巧みさが歴史を作る条件
2016-06-16
採点したら何点とれるだろう。
広島のオバマ演説は概して日本で好評、米国で不評だった。しかしさすがにその弁舌の巧みさを危ぶむ者はいなかった。
歴史を作る人物は事の本質を言葉で残している。
ヒトラーは「言葉は未踏の領域への架け橋」と言った。
経験上「人は小さなウソより大きなウソにだまされやすい。小さなウソは人々もつくが、大きなウソは怖くてつけないからだ」と喝破した。
その結果「ウソを大声で時間をかけて語れば、人はそれを信じるようになる」と側近に語った。
人の心に言葉を留めるためにゼスチャーを磨くしかないと考え、リハーサルを重視した。
お抱えの写真家ハインリヒ・ホフマンに撮らせたリハーサルの写真を繰り返し見て、アクションを工夫した。
彼の名文句「人生の価値は息をした数ではなく、心奪われ息するのも忘れる瞬間を経験した数で決まる」はそのアクション効果で歴史に残った。
ライバルのチャーチルは英国人らしい甘、辛ウイットの名手だった。
「前もって予言するのは避けることにしている.事が起こった後に予言するほうが優れたやり方だから」などと随分人をくっていた。
ライバル党の女性議員ブラドッグに「随分酔っているじゃない」と冷やかされたチャーチルの返しがすごかった。
「そうだよ。だが僕の酔いは朝にはさめてシラフになるが、君は朝になっても不細工だ」。
今なら、セクハラで訴えられるところだ。
ヒトラーに一歩も引かないその豪胆さは有名で、「勇気がなければ、他のすべての資質は意味をなさない」と言った。
オバマの後継、民主党候補ヒラリーは「国務長官時代の個人メールはうっかりミス。私は家でクッキーを焼いて満足する女ではない」と言った。
共和党候補のトランプは「メキシコ人は強姦魔。麻薬や犯罪を米国に持ち込んでいる。殺人鬼イスラム教徒は無用。締め出せ」と言った。
うっかりミスのヒラリーと人種差別の自覚がないトランプは一体、何点減点を食うのだろう。
※コラムの内容はコラムニストの個人の意見・主張です。