キム・ホンソンの三味一体
vol74 3歳児の先入観
2017-05-18
骨折りの子育ての最中、子供たちの成長を見ることは親にとってご褒美とも言えます。先日、動物が大好きな家の双子ボーイズのためにディズニーの『ジャングルブック』のDVDを見せてあげました。予想は見事に的中してみんな大喜びで、映画の最初から最後までピョンピョン飛び跳ねながら観ていました。
一つ面白かったことは3歳児でも、すでに先入観のようなものを持っているということです。映画の中では狼、黒豹、虎、熊や猿などいろいろな動物が出てきます。しかし意外にもどちらが悪者でどちらが善人かがよく分かりません。狼や黒豹のように恐いイメージがあって悪者だろうと思っていたのに、実は主人公の少年を守り育ててくれた善人だったり、逆に人なつこいお猿さんが悪者だったりするのです。最初は期待を裏切られることも含めて楽しみつつも戸惑ったのですが、時間が経つに連れてだんだんと悪者と善人が分かるようになります。すなわち猛獣であるかないかは関係なく、それぞれの動物の行動を実際に見て善悪を決めているようでした。
先入観とは、おそらく動物的な本能として身体に備えついている防御本能の一つではないかと思います。突如と知らない相手が現れた時、それが敵か味方かを瞬時に見極める必要があります。その時に基準になる情報がない場合、勘やうわさ(先入観)などに頼ることになります。まだ文明を持たなかった原始時代の人々にとって先入観は自分を守るために役に立ったかもしれません。
しかし、21世紀の現在においてさえも、先入観によって特定の人種、宗教、性別に対して偏見があり、判断されることが非常に頻繁にあることが問題です。アメリカにおいて警察の特定な人種に対する過剰鎮圧、政府の特定の宗教圏に属する人々に対する弾圧的な入国管理は、その代表的な例ではないでしょうか。
先日、肌の色や宗教ではなく、個々人の価値観に基づく言動によってその人が判断される社会を作るために、何ができるだろうかと考えました。微力ながらも私にできることは、私たち夫婦と3人の子供がまず自らを閉じ込めがちな先入観から自由になることではないかと思います。私たち(キムファミリー)を私たちたらしめるのは国籍でも言葉でも文化でもない。私たちが誰であるかは、私たちが何を信じ、何を望み、何を行うかによって決まるという当たり前な事実を忘れないで生きていきたいと思います。
※コラムの内容はコラムニストの個人の意見・主張です。