キム・ホンソンの三味一体
vol79 あなたは悪くなんてない、そのままで良いんだよ
2017-07-27
先日、アジア系の人権に関するリサーチをしていたところ、たまたま韓国で行われたソウルクイアー文化フェスというイベントのYoutube動画を見つけました。LGBTQ(性的マイノリティ)に対して比較的に偏見のないアメリカでならまだしも、差別と偏見の厳しい韓国でこんな催し物があったのかと思い、動画を観ました。
動画の中では「性的マイノリティの子を持つ親の会」というグループのブースの前で、フリーハグと書いたサインを持った女性の方々が何人もいて、列に並んでいる若者達を一人ずつハグしていました。どう見ても買い物かごを持ってその辺の商店街でも歩いていそうな普通のお母さん達が、学校の制服やジーンズにTシャツ姿の至って普通の若者達を、まるで戦場から生きて帰った我が子にするようにハグをして、涙でくしゃくしゃになった一人一人に「あなたは悪くなんかない。そのままで良いんだよ。負けないで頑張ってね。」と涙ながら声をかけていました。なんと彼女達は全員、性的マイノリティの子を持つ親であって、自分の親にすら打ち明けられずに一人悩んでいる性的マイノリティの子供達を、その子の親に代わって慰め励ましていたのでした。
画面の下のテロップには「私達はすべての性的マイノリティの親であり家族です。私達の子供達が性的マイノリティであることよりも、彼らが嫌悪と差別が蔓延するこの社会の中で生きてゆくことの方が心配です。変わらなければならないのは、性的マイノリティを嫌悪するこの社会であって、私達の子供達ではありませんでした。」とありました。ブースの中の自由掲示板には「お母さん、弱くてごめんなさい。いつかは本当のことを話したいです。」等と参加した子供達のメッセージで壁一面が埋め尽くされていました。
考えてみますと1967年までアメリカでの異人種間の結婚は違法でした。白人の血とその他の劣等な人種の血が混ざるべきではないという白人至上主義的な偏見が蔓延していたのでしょう。しかし、アメリカ社会の中で人種という「違い」から受ける偏見や差別と戦ってきたはずのアジア系の方に、先天的な性的指向という「違い」に対する偏見や差別が根強いというのはとても悲しいことだと思います。僕自身も、今まで自分の痛みを通して他人の痛みを理解する努力を怠ってはいなかったのだろうかと自分に問う今日この頃です。
※コラムの内容はコラムニストの個人の意見・主張です。