後藤英彦のぶっちゃけ放題!
第438回 ピラミッドとハリファの違い
2017-08-10
上へ上へと上昇する現代の商業ビル、二百㍍台では話にならない高層化の進行だ。
最近LAに完成したウイルシャー・グランド・センターは地上三三五㍍の七三階建て。米国で九位、世界で六六位、米西海岸で一番高いという。
高層街に開発したビルで、テナントに商業、オフィス、ホテル、催事場等を予定している。
一九三一年竣工の王者エンパイア・ステートビル(三八一㍍)はすでに文化財扱いだ。
911以後に着工、三年前に竣工した全米一のワールド・トレードセンター(五四一㍍)等に抜かれ、全米五位まで落ちている。
世界をガリバーとすれば日本はまるで小人だ。
日本を代表する虎ノ門ヒルズ(二五五・五㍍)や東京都庁本庁舎(二四三㍍)も世界トップ一〇〇にさえ入っていない。
ただし鉄塔の東京スカイツリー(六三四㍍)は別で、全建造物(鉄塔、商業ビルを含む)中、世界二位だ。
世界一位はドバイの商業ビル、ブルジュ・ハリファ(八二八㍍)で、「ドバイの起爆剤に」というマクトウム首長らの悲願を実現させた。
二〇一九年には化け物がジッダに出現するという。
噂のキングダム・タワーは一〇〇七㍍、人類初の一㌔超えの商業ビルだ。
エジプトのファラオ崇拝ほど高層墓を追求した文明はなかった。
クフ王のピラミッドは何と一四六㍍で、一㍍角の石材約二五〇万個を積み上げ、四千六百年前の王のミイラを高みに拝した王墓だ。
隣メソポタミアの神殿ジグラットは平均二〇㍍ほどだ。
バベルの塔として聖書に出てくるネブカドネザル二世(紀元前六世紀)の神殿だけが例外で、九一㍍の威容を誇る。
古代ギリシャ・ローマの神殿は四〇㍍前後、高さへの憧憬はエジプトほど強くない。
天上への憧憬は中世一三、四世紀のゴチック大聖堂に収斂される。
ドイツのウルム(一六一㍍)、エストニアの聖オラフ(一五九・七㍍)等欧州の大聖堂は天の神の御足に近づく信仰の具体化だった。
古代王への崇拝と中世天の神への憧憬と現代の商業主義とは目指す精神が根本的に違っている。
※コラムの内容はコラムニストの個人の意見・主張です。