キム・ホンソンの三味一体
vol88 ごらんなさい。これがあなたの母です。
2017-11-30
日本から家内の双子の妹が娘のSちゃんを連れてキム家に遊びに来てくれました。ちょうど感謝際の休みでもあったので、みんなキャンプに行きました。キャンプとはいってもテントを張って泊まるような本格的なものではなくて、海のそばにあるコテージに泊まりながらビーチやキャンプ場のプールや公園で遊んだりする程度のものです。それでも子供達はこんなに楽しいことは初めてだと言わんばかりエキサイトして遊んでいました。
夜はみんなで焚き火を囲むように座ってマシュマロを焼いて食べたり歌ったりと、本当に楽しい家族の時間を過ごすことができました。Sちゃんを含めて4人の子供達は毎日ケンカと仲直りを繰り返しながらも楽しく遊び、夜になれば屋根裏部屋に寝袋を並べて一緒に寝るような、まるで元々4人兄弟だったかのような楽しい日々を送っていました。
そんな平和な時間を過ごしていたある時、たまたまつけたテレビからエジプトで起こったテロのニュースが流れました。イスラム教過激派ISが同じイスラム教の神秘主義者のグループを異端だと敵視し305人もの人々を無惨にも殺戮したこの事件は、他者の「違い」を受け入れないことがエスカレートすれば、最終的にはその相手を抹殺するところにまで至ることを私達に教えていると思いました。「個人の自由」という名目で、自分と合わない誰かを軽く避けたり無視することに慣れている私達に対する警鐘に思えてなりませんでした。
同じルーツを持つキリスト教とイスラム教のそれぞれの原理主義者の間での葛藤、そして同じイスラム教であっても自分達とは違う分派を受け入れず抹殺するような、人類が抱えているこの闇の部分に対して私達は全く無力であるようにさえ思えました。
その時のことです。うちの息子がSちゃんのママを「ママ」と呼んでいることに気づきました。おそらくSちゃんがそう呼んでいるから自分も「ママ」って呼んだのでしょう。このことでふとイェスが十字架にかかった時、そばに立っていたご自分の母と弟子に言われた言葉を思い出しました。イェスは「婦人よ、ごらんなさい。これはあなたの子です」と言った後にその弟子に「ごらんなさい。これはあなたの母です」と言いました。それ以来、この弟子はイエスの母を自分の家に引きとったと聖書には書かれています。
すべての母を自分の母のように思いすべての子を自分の子のように思うこと、このことこそが私達にして立場や主義主張や利害関係を超えて、人類としての一致に導くものではないだろうかと思う今日この頃です。
※コラムの内容はコラムニストの個人の意見・主張です。