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コラム

Los Angelesの顔
vol.38 佐々木光露さん

2017-01-20

津軽三味線奏者 佐々木光露三絃会会主



 ―津軽三味線を習い始めたきっかけは何ですか。

 私は高校を卒業してアメリカの大学に留学しましたが、その学校では卒業する先輩のために、後輩たちがプレゼントとして発表会をしました。クラスにはさまざまな国の出身者がいたので、自分の母国の民謡や踊りなど伝統文化を発表会で披露しようということになりました。

 他国の人は自分の民族衣裳を自分で着ることができて、自分の国の伝統楽器を一つは持って来ていました。彼らは伝統舞踊を踊ることができるし、母国の歌も歌えました。

 しかし私たち日本人の学生は、日本の伝統芸能が何もできず、和楽器も習ったことがないことに気がつきました。そこで私たちは小さい頃に習った童謡「ちょうちょう」を歌いました。すると、音楽に詳しいクラスメートが「その歌は日本の民謡じゃないよ」と教えてくれました。てっきり日本の童謡だと思っていたら違ったのです。

 私たち日本人の学生は日本の伝統文化について何もできず、何も知らず、私はとても恥ずかしかったです。

自分が母国のことを知らなかったことに気がついたので、大学を卒業して日本に帰国したら、何か日本のものをしようと決めました。そして、たまたま家のそばにあった教室の門を叩いたら、津軽の三味線でした。

 ―津軽三味線の魅力は何ですか。

 私は音楽だとロックやポップスとかテンポの速いものが好きです。ゆったりした音楽は身に合いません。教室で先生が弾いてくださった曲はものすごくテンポが早かったので、「これは何だろう」って初めて惹かれて、津軽三味線はビビっと来るものがありました。津軽の早いテンポが、ドーンと入ってきました。

 普通なら譜面があって民謡の決まった形がありますが、津軽は譜面のない演奏、アドリブです。津軽三味線はアドリブ楽器の要素が強いんですよ。アドリブ楽器だから海外の方も“魂のある楽器”だと興味を持たれるのかなと思います。

 私は日本で暮らしていた頃、師匠の佐々木光儀先生と一緒に海外公演をしました。ニューヨークのカーネギーホールで演奏した時は、師匠と二人で津軽の独特のアドリブのテンポの速い曲を弾きました。演奏が終わるとお客様からスタディングオベーションをいただきました。コンサート後に楽屋にいらしたお客様が「津軽三味線はジャパニーズ・バンジョーだね」とおっしゃいました。確かに、海外の人が興味を持つのが分かるなって思いました。

 本物の津軽三味線には棹の裏に「サワリ」が付いています。これは津軽の音を作るための一つの仕組みです。ネジを回すとサワリが弦に触れて音がビーンと響きます。これが2の糸、3の糸にも共鳴して、さらに胴のところで共鳴して、ビーンという音が自分の体に伝わってきます。

 津軽の音は体の中にズーンって来るんですよ。これが一番気持ちいいです。この音は、バチの叩き方、角度、構えなど全てが上手くいかないと出てこない音ですけれど、技術が上がってきて、この音が出るとすごく達成感があって、体に響いて来る音が、とても気持ちいいです。

 ー日本にいた頃は何カ国も海外公演をされていましたが、アメリカに引っ越してから活動をしなかった時期があったんですね。

 アメリカに越してきて、三味線は日本でしかできないからもう弾かないだろうな、アメリカで三味線をする人もいないだろうなと思っていたので、パートでウェイトレスをしていました。

 ある日、津軽三味線が聞こえてきて音がする方を見ると、背の高い白人の方が、日系マーケットの前で津軽三味線を弾いてストリートライブをしていました。その白人さんが弾いていた三味線は、私の流派、佐々木流の三味線でした!流派ごとに特徴があるので、聞けば分かります。

 「なぜ私の流派の三味線をあの白人さんは弾いているんだろう」と思って声をかけました。そうしたら、その白人さんは、日本に3ヶ月ほど滞在した時に、私の兄弟弟子から2ヶ月間ほど津軽三味線を習ったそうです!

 それで私は自分の身分を明かしました。すると、その白人さんから「ぜひロサンゼルスでも教室をやってくれ」とせがまれたので、教室を始めることになりました。とても不思議です。最初は彼だけに教えていたけれど、次々に「教わりたい」と生徒が増えて、教室を本格的に初めて今年は6年目になります。

 ー教室をしていて良かったと思う時はどんな時ですか。

 最近のことで言えば、 私の弟子、弟子の妹さん、そして知り合いが関わった映画「Kubo and the Two Strings」を観た時です。私の弟子の妹さんはクレーアニメの技術者として、知り合いは劇中で流れる津軽三味線の演奏者として映画に携わりました。スクリーンに彼らの名前が映し出されて、弟子の妹さんが作った映画を観れるなんて、私はなんて幸せなんだろうって思いました。

 また他の弟子は、この映画のPRイベントにKUBOのコスチュームを着て津軽三味線を演奏しました。津軽三味線を続けてきて、指導してきて、本当に良かったです。


※コラムの内容はコラムニストの個人の意見・主張です。
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