Los Angelesの顔
vol.55 ジェイ・イイヌマさん
2018-02-24
イイヌマ・メディカル・クリニック(旧 光岡メディカル・クリニック)医師・医療コンサルタント・俳優
―この度、ドクター・イイヌマが、新しく「イイヌマ・メディカル・クリニック」を、以前の「光岡メディカル・クリニック」と同じ場所で開業したんですね。
昨年、ドクター光岡が亡くなり、日本語の通じるクリニックが減るかもしれないと、日本語を話すコミュニティでは心配の声があがっていました。
ドクター光岡のお嬢さんが、旧「光岡メディカル―」の場所で、クリニックを開業するドクターを探していると、メディカル・グループのチーフから聞きました。このお話をいただいて、私はすごく考えましたが、考えれば考えるほど楽しみになってきたので、開業を決めました。
―日本語を話しますか。
両親は日系アメリカ人なので、私は少しだけ日本語を話します。私が幼少の頃、両親は子どものことを話す時は日本語でした。暗号のように日本語を使っていましたよ(笑)。
現在、クリニックでは通訳も入りながら診察をしていますが、日本語は患者さんのために必要なので、私は医療用語を日本語で勉強しています。
医療用語は専門的なので、英語を母国語とするアメリカ人でも分からないことが大半です。ましてや日本語を母国語にしている方が理解するのは大変だと思います。
日本語を話す方が多く暮すリトル東京で開業すると決めたのですから、私としては日本語を早急に習得するのは優先事項です。
―日本人の患者さんは“遠慮”をして、自分の症状をなかなか医者に話さないこともあり、症状が悪化した人も、以前いたそうです。
これは日本人の文化的背景なども関係して、自分の気持ちや意見を表現するアメリカ人とは異なるからでしょう。この点について、どうお考えですか。
多くの人は、医者が患者さんより立場が上だと考えているようです。しかし私は、医者と患者さんは同じレベルにいるチームだと、いつも思っています。
もし、医者と患者さんの関係が上から下に命令するような関係ならば、患者さんはとても不快に感じるはずです。
例えば、もし、あなたが、あと1時間だけ生きられるとしたら、どうしますか?
私ならば、自分がケアする人たちと一緒にいたいです。「何かをする」ことではなくて、「いる」ことが大事です。
患者さんが安心して落ち着ければ、医者にもっと正直になれて、シェアもしてくれるでしょう。そこには信頼が必要で、関係性を築くのが大切です。
医者と患者さんがチームになると、患者さんは「どうして、これをしなければならないのでしょうか?」「なぜ、この薬を飲まないとならないんでしょうか?」など、医者に質問しやすくなります。チームとしてやっていると、結果もとても良くなります。これを私は目指しています。
日本語にはときどき面白い言葉がありますね。日本語で、教師を「先生」と呼びますし、医者も「先生」と呼びます。
つまり医者というのは教える人です。私は、患者さんに「どんな状態なのか」「なぜ、この状態になったのか」「これから、どんな治療が必要なのか」「薬を飲むと、どんな副作用が、どの期間でるのか」などについて説明します。
「何も分からない」という状態に人は不安になってとても怖くなります。しかし、患者さんは説明を聞くと、謎が解けて、怖さが消えるでしょう。
これが私の医学への哲学です。
例えば、高血圧の患者さんに、「この薬を飲んでください。何か問題があれば、また来てください」とは、私は言いません。私は薬を飲む代わりに血圧を下げる方法―減塩の食べ物や運動―などについても、患者さんに話します。
―イイヌマ・メディカル・クリニック以外の活動を教えてください。
アーケディアにもクリニックを開業しています。今後は1週間の半分はリトル東京のクリニックに来て、残りはアーケディアのクリニックやスキルナーシングホームの往診に行きます。
以前は、もっと時間があったのでテレビのコマーシャルなどにも出演したりしていました。また作曲をしたり、拳法もしたりしていました。
けれど、今は患者さんたちに会う方が楽しいですね。人生で大切なことは、個人一人でいるのではなく、お互いがお互いの役に立つために存在することだと、私は思っています。
―今後の抱負を教えてください。
多くの人が、リトル東京や周辺に引っ越してきています。ドクターなど必要ないと思っている若い世代にも、もし健康保険があるのなら、その恩恵を受けてほしいです。何かがあってから健康に気をつけるのではなくて、予防として健康に気をつけるようになっておくといいですね。
多くの方に、私がリトル東京にいることを知ってもらい、このクリニックで、できるだけのケアが受けられることを知ってもらいたいです。
◆イイヌマ・メディカル・クリニック
住所:200 S. San Pedro St, #302,
Los Angeles, CA 90012
時間:月水金 9:00am - 12:00pm
火 2:00pm - 5:00pm、 木・休診
電話:213-947-3171
保険:海外旅行保険・HMO、他多数の保険
※コラムの内容はコラムニストの個人の意見・主張です。