旅は呼んでいる。
vol.17 イスラエル ~エルサレム、ベツレヘム~
2018-11-08
映画“ダ・ヴィンチ・コード”が話題になっていた頃、「内容がイマイチわからなかった」という知人が結構いた。理由はずばり、宗教的な要素が多く、あれこれ考察している間にストーリーが進んでいってしまった…というもの。
あらゆる享楽に耽ったが、結局は虚しかった。人間は苦労して働き、ご飯を食べ、愛し合い、楽しんで生きることこそが幸福なのだ―旧約聖書で最も好きな文書、“コヘレトの言葉”を記したソロモン王。彼が建設した神殿の名残である『嘆きの壁』を前に、厳粛な気持ちで一礼をしてから、ささやかな願いを書いた紙を壁に挟んだ。
そういえば、現地の方に「日本人は無宗教なのだろう?」と聞かれて戸惑い、国や宗教に関係なく、敬うべきと感じたものは敬うのだと伝えたかったが、そのニュアンスは上手く表現出来ず残念だった。
イエス・キリスト生誕の地とされるベツレヘムは、パレスチナ自治区ということで厳重な境界線をくぐる時点で緊張が走ったが、実際訪れてみるととても友好的で平穏な空気。タクシーの運転手は聖書にまつわる話以外にも、車を走らせながら「あれはバンクシーの絵だよ!」と親切に教えてくれた。聖誕教会は、文字通りイエス・キリストが生まれた神聖な場所。何を感じたかというと、ひたすら、今、自分はものすごい場所に立っているのだ!という感動が大きかった。
なお、イスラエルは入国審査が厳しいことで有名だ。案の定小一時間ほど質問攻めにあい、荷物の中身を全て検査された。量が少なすぎる、この魚眼レンズが怪しい、過去にインドネシアに行ったようだが目的は?など。しかし、テルアビブの空港ではおよそ半世紀前に日本赤軍による銃乱射事件があった上、現在も民族間、宗教間の問題が絶えないので過剰なセキュリティはもちろん納得だ。
西洋の映画や小説、音楽、美術を鑑賞する上で聖書の知識は欠かせない。それらをもっと深く理解したい!というきっかけで読んだが、教養として身に付けておいて良かったと思っている。
※コラムの内容はコラムニストの個人の意見・主張です。

