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コラム

Los Angelesの顔
No. 57 マーク 鶴田さん 2

2018-03-31

今までにない音を作る

ATV Group Corp USAが開発した電子フレームドラム「aフレーム」

 ーATV Group Corp. USAのお客様は、どのジャンルのミュージシャンですか。

 ロック系かポップ系ですね。クラシック系はいません。クラッシックは、今まであるものを求めていて、僕らは今までになかった音を求めている。これから表現できる、新しい音をやりたいんです。今までにない音を作るにはどうしたらいいのか。これからの音に興味があります。

 ー「aフレーム」について。

 常に新しい楽器を作ろうとやってきた梯が、最後に「アイディアがある」と言って作り始めた楽器が「aフレーム」です。

 彼のアイディアでエンジニアが作り、ミュージシャンも加わり、ドンドン改良していきました。
 これまでバンドの前面に出るのはギタリスト、ボーカル、キーボードなどで、パーカッショニストはバンドの後ろで演奏していました。ソロは取れなかった。

 しかし「aフレーム」は、パーカッショニストが注目を浴びることができる商品だと思っています。ソロが取れる、とても良い商品だと思っています。一度演奏していただいた方にはファンになっていただいています。これから伸びる商品だと思います。


(左から)鶴田氏の長年の友人、ゴダイゴのTommy Snyder。(撮影・鶴田氏)、aフレームを演奏する梯郁夫。梯郁太郎の息子。(撮影・スコット・ハンター氏)、鶴田氏が開発したアクティブピックアップを搭載したギターを演奏するJeff "Skunk" Baxter(Photo ©Dan A.)

 ー電子ドラムについて。

 これまでの電子ドラムは、アコースティック・ドラムと同じレベルに達していませんでした。しかし、弊社の電子ドラムは、アコースティックに負けないくらいの表現力を持った電子ドラムだと思います。

 楽器の場合、アコースティックの代用品としてスタートしても、代用品で止まってはいけないと考えています。元の楽器を超えないといけません。超えるためには、元の楽器と同じことができないといけない。尚且つ、その上を行く。

 例として、電子ピアノは、ピアノの代用品としてスタートしました。ピアノは音が大きくて振動も大きかった。そこで音を小さく調整できる電子ピアノが開発されました。そしてドンドン発展して、現在、電子ピアノの分野が確立するほどになっています。

 ギターの場合はバンド演奏だと音が小さかったので、1950年代にレオ・フェンダー氏が、エレクトリックギターを作り、アンプで大きな音を鳴らすシステムを普及させました。今やアコースティックギターとエレクトリックギターでは音も全然違いますし、まるっきり違う楽器になりました。

 楽器の演奏方法を変えるのは良くないと僕は考えます。ミュージシャンが何十年も練習を重ねて身につけた演奏方法を大きく変えるような楽器を作ってしまったら、ミュージシャンは再び一から始めなければなりません。演奏方法はそのままで、それを基礎に一歩、上に行ける楽器、表現力を出せる楽器を作りたいです。

 ーこれまで、どんな気持ちで楽器を作ってきましたか。

 若い頃にアメリカで僕が好きな音楽のミュージシャンに会った時、彼らは僕らのように無名な人間の話をちゃんと聞いてくれたり、実際に楽器をテストしてくれたりしました。自分が提供できるものを、彼らがテストしてくれるのはすごく嬉しかったです。

 この世界で生きていこうと思って、会社の方針とはかけ離れたことでも個人的にやりながら、いろいろなミュージシャンとつながりを深めてきて、今日までやってきました。自分はほんの一部でいいから、何かできたらという気持ちで、やってきました。

 ー今までにない楽器を作るためには、何が必要でしょうか。

 技術、センスはもちろん、それ以上に「次は何か?」という気持ちです。

 梯が「未来の新聞が見たい。技術がどう進んでいくかを見たい」と言っていました。技術が進むとそれを取り入れて新しい楽器を開発できます。技術がどのように進むか見ることができれば、新しいイメージが湧くと思うんです。常に新しい次の商品を見たい、楽器としての次のものを見る、これが必要です。

 ー楽器の開発にミュージシャンの意見を取り入れますか。

 僕がアメリカに来た1970年代は、プロのミュージシャンと仕事をする中で情報をもらい、それを日本のメーカーに伝えて、楽器が作られました。

 ある時、僕はミュージシャンから情報をもらうばかりではよくないと思い、僕からも何かを提供して、彼らから情報をいただく形にしたいと思うようになりました。

 そこでエンジニアだった僕は、彼らの「カスタマイズして欲しい」という要望に徐々に応えるようになって、「ギブ&テイク」という形の付き合いを実践しました。カスタマイズした後に、その情報が次の楽器の開発や改良に生かされました。

 今も「ギブ&テイク」のやりとりがとても重要ですが、技術の進歩によって、「ギブ&テイク」の形が変わってきました。
 最近は技術的なものが、ミュージシャンの発想を超えています。僕らから「技術的にこういうものができるよ」と彼らに見せないと、彼らはイメージが湧かないことがあります。だから、まず彼らに楽器を見せて、彼らがどんな反応をするかを、僕らはフィードバックとして受け取っています。

 ー今後の抱負は。

 今あるものではなく「アートウェア」という形で、音的にも芸術的にも一歩、上に行ける商品を開発していきたいです。

【マーク 鶴田さん プロフィール】
奈良県出身。(株)エース電子工業入社後に、梯氏に誘われて(株)ローランド社に入社しアメリカに駐在した。その後、再び梯氏に誘われ、ATV Group Corp. USAに勤務。

ATV Group Corp. USA
www.atvcoporation.com

2018年3月31日付掲載


※コラムの内容はコラムニストの個人の意見・主張です。
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