Los Angelesの顔
No. 67 Kana Ishiiさん
2018-07-28
ヘアメイクアーティスト Lukaro Salon and Spa Beverly Hills
◆ロサンゼルスを選んだ理由と、ビバリーヒルズのヘアサロンを選んだ理由は。
旅行でアメリカを訪れた際に、天候、人、街、とにかく全て気に入ったのがロサンゼルスでした。私は横浜出身ですが、ロサンゼルスと横浜は共通点がたくさんあります。私は東京より横浜派、NYよりLA派なんです(笑)。
勤務地をビバリーヒルズに選んだのは、やはり全ての最上級のものが揃っているからです。
ヘアサロンも激戦区ではありますが、現在所属しているヘアサロンには、Blake Lively、 Bella Thorne、 Avril Lavigne などハリウッドスターや歌手の著名人を顧客に揃え、オーナーはゴールデングローブ賞やグラミー賞などの各授賞式のヘアメイクの仕事も多くこなし、学ぶことも大変多いです。
◆アメリカで仕事して、日本との違いを一番感じたのはどんな時。
アメリカだと色々な面において自由な分、責任も個人に課されます。日本で美容師として勤めていた頃は会社という組織に守られた一方、規則に縛られることもたくさんありました。
こちらのサロンでは、ほぼスタイリストは個人事業主として雇われます。成功するも失敗するもある意味自分次第。リスクの多い賭けのような仕事に聞こえますが、私にはこちらのほうが合っていると思います。
◆アメリカで仕事していて、「自分は日本人だなー」と感じる時は。
すぐ素直に謝れることです。これはアメリカ人ってなかなかできないんですよね(笑)。私のクライアントは、ほぼ現地アメリカ人ですが、私を含め日本人は謝ることに対して躊躇しないので、何か起きたらすぐに謝罪します。大抵のことはこれで収まります。
◆これまでの仕事で、印象に残っているエピソードは。
アメリカでスタイリストになったばかりの頃、個人事業主扱いなので勿論基本給はなし。no Client no moneyなので、必死でお客さんを探しました。
フライヤーを作って配ったり、ネイティブではない英語で、街中で話しかけて「髪切らない?ディスカウントするよ!」と直接営業かけたりしてました(笑)。
今では指名予約でいっぱいの毎日ですが、思うとあの必死さと努力が結果として実ったのだと思います。
もう一つは去年のアカデミー賞受賞式のバックステージで仕事ができたことです!日本にいた頃の私は、まさか自分がアカデミー賞の会場でハリウッドスターと半径1m以内で仕事ができるなんて夢にも思っていませんでしたから。
◆着物は、海外ではとても躍動感があり、華やかさが際立ちます。海外での和装の良さについて。
渡米後、ロサンゼルスで、着付け師・着物デザイナーでもある押元末子さんの元でヘアメイクとしてお仕事を何回かさせていただく機会があったのですが、ハイファッションとミックスしたモダン着物から伝統的な着物まで、現地アメリカ人からの評価はとても高いと思います。
これからも日本人として、現代美と融合させながらも日本の伝統文化をアメリカに広められたら嬉しいです。
◆ヘアメイクアーティストは、コミュニケーションがとても大切だと思いますが、クライアントと上手にコミュニケーションをとる秘訣は。
アメリカ人はこちらが伝えたい努力をすれば、必ず聞いてくれようとします。なので自分の英語力は関係なく、伝えようとする気持ちが大事だと思います。コミュニケーションって本当にアメリカ人は大切にしていると思います。
◆センスを常に磨き続けるために、日頃から心がけていることは。
ソーシャルメディアなど、最新のニュースや情報を毎日随時チェックすることです。
よく歳を重ねると「今時の若者は、、、」とか、「私たちの時代は、、、」と現代のものを受け入れない傾向がありますが、今を生きて、その時代に対応していくには「温故知新」の気持ちで、柔軟性が必要にもなると思います。
あと、ロサンゼルスは年間通して天候もよく、外出しやすいので、時間があれば街やアクティビティに出かけています。
◆母校の生徒さんにも特別指導をしているそうですね。指導のきっかけと、指導を始めて学んだことは。
母校の校長先生とビバリーヒルズで、15年ぶりに偶然再会したんです!彼女はロサンゼルスで生まれて育ったので、こちらにいることも多いのですが、、、。
母校、山野美容学校の海外研修旅行で、私の勤務地であるビバリーヒルズのヘアサロンに生徒が訪れるところから始まりました。
やはり山野美容学校は私の母校であり、生徒たちは後輩なので、思い入れが全然違います。
海外で活躍するスタイリストを目指す生徒も多く、夢を追いかける後輩たちに私自身の経験からのアドバイスが役に立てればと思います。
若く純粋な彼らからの率直な質問にハッとさせられることも多々あって、初心忘れべからずですね。
◆ボランティア活動もしているそうですね。活動を通して感じたことは。
「Girls.inc」というNPOで何度かボランテイアをさせていただきました。色々な環境下におかれている中学生以下の女子たちのためのNPOで、ミッシェル・オバマ氏など多数の著名人やセレブも参加しています。
移民である私もアメリカでヘアメイクアーティストになるには難関も多かったので、この職業を通して、大変な境遇の中で生きる若い女の子たちに夢を与えられればと思っています。
◆今後のプロジェクトについて。
山野美容芸術短期大学の生徒さんたちが9月に私が勤務しているヘアサロンで研修旅行の一環としてインターンをします。
最近この学校ではグローバルスタイリストコースという専攻ができて、グローバルで活躍したい、外国人のお客様にもどんどん応対できるスタイリストになりたいという生徒さんたちが集まっています。
そんな生徒さんたちにとって良い経験となるようなインターンになればいいと思ってます!
【Kana Ishiiさん】
Instagram: @hairbykana
Website: www.hairbykana.com
Facebook: @hairbykana
<2018年7月28日掲載>
※コラムの内容はコラムニストの個人の意見・主張です。