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コラム

Los Angelesの顔
No. 68 大澤広暉・Hiroki Oshawaさん 1

2018-08-25

Film Director


◆最新作の映画『The Alc-Man』のアイディアの元は。

 学生時代の飲み会です。お恥ずかしい話ですが、当時は朝方までコールが鳴り止まない飲み会を毎晩のように開いていました。そこでは、「学注(学生注目)」と呼ばれる伝統的な自己紹介をしてから最初の一杯を飲むのが習慣でした。

 そんな酒で酒を洗う飲み会を続けていたある日、瓶ビールを飲み干してはトイレで吐き、戻って来てはまた飲み干す、というのを延々と繰り返せる男に出会いました。便所から何度も蘇っては酒を飲み続けるその姿から、人はいつしか彼を「フェニックス=不死鳥」と呼ぶようになりました。

 大学卒業後、玩具会社で働いていた頃に担当商材であるヒーロー物の番組を見た私は、彼らの名乗り、変身ソング、パワーアップ形態などが、かつての飲み会の学注、コール、フェニックスに重なりました。その時、いつかお酒にまつわるヒーロー物の作品を作りたい、と思いました。

◆大澤さんのコメディセンスのルーツは。

 今思えば、幼い頃からおふざけが過ぎていたのかもしれません。学校の先生方からは「大騒ぎ大澤」と呼ばれていました。あの頃から精神年齢はあまり変わらないようで、そろそろ28歳のいい大人ですが、まわりからは「5歳276ヶ月」と言われます。基本的に笑うことが好きで、人が笑うのを見るのも好きです。

 精神年齢の低さや、人目が全く気にならない、人と同じ事は絶対にしたくないという性格が加わって、脚本を書いているうちにバカげたアイデアによって脳ミソが侵され、気付いたらおかしなストーリーが出来あがっているのだと思います。

◆映画の中で、飲んだ後はラーメンを食べるという日本の“飲み文化”のシーンがありますね。
 アメリカでもラーメンは日本食の代名詞として寿司とともに市民権を得ていますから、すんなりと受け入れていただけるようです。実際、試写会では多くの観客から「ラーメンが食べたくなった」と言っていただきました。


◆撮影間近でコスチューム2着と制作費が持ち逃げされた事件があったと聞きました。

 これは私の映画制作人生最大のピンチだったと言えるでしょう。 似顔絵検定1級を持っている私は、VFX(視覚効果)を前提にグリーンマット素材を使ったヒーロースーツを自らデザインしました。撮影2ヶ月前に、デザイン案と制作費$1,000をプロのコスチューム制作者へ渡しました。

 撮影2週間前になって、やっと制作者から送られたきたコスチュームの写真は、私のデザインとは似ても似つかず、低クオリティーのハロウィン衣装でした。そこで修正を依頼すると、撮影5日前にコスチューム制作者と音信不通になってしまいました。

 撮影5日前といえば、アクター、クルー、機材、撮影ロケーションなどのスケジュールを、すでにブッキングした状態なので、撮影の延期はできません。何が何でも撮影までにヒーロースーツ2着が必要でした。

 しかし不眠不休&低報酬でコスチュームを制作してくれる人など、なかなかいません。結局、最後に頼れるのは自分自身だけでした。監督として超多忙な時期である私自ら寝ずに素材探し、裁断、裁縫をしてコスチューム2着を完成させました。死ぬかと思いました。

◆『The Alc-Man』の見所は?

 監督である私自ら1年の歳月をかけて制作したVFX(視覚効果)でしょうか。

 Alc-Manのヒーロースーツは映画タイトルロゴと同じデザインがあしらわれており、起動させるとその部分が発光し、彼らはレーザー状の光る手裏剣を投げて戦います。また、宿敵ブーズ大帝は瞬間移動が得意で、手から波動を出して人の欲望を操ります。

◆『The Alc-Man』の公開予定は?

 これから映画祭への出品が控えていますので確定していませんが、来年2019年を予定しています。

【『The Alc-Man』あらすじ】
酒を飲んでスーパーヒーロー「アルクマン」に変身したジャック・アダムズは、この世にアルコール帝国を築かんと目論む酒神ブーズ大帝を撃退した。しかし、この時、戦いに巻き込まれた最愛の妻、サキを失ってしまった。それから4年後、ブーズ大帝が復活した。ジャックは飲酒による肝臓ダメージから飲酒困難=変身不可能になってしまった。しかしブーズ大帝を倒せるのは、伝説のアルクマン「フェニックス」のみ。「フェニックス」になれる可能性があるのは、ジャックのスーパーパワーを受け継ぐマリしかいなかった。しかし反抗期のマリはジャックに反発してー。はたして父と娘はブーズ大帝を再び倒せるのか!?

<2018年8月25日掲載>

<2に続く>


※コラムの内容はコラムニストの個人の意見・主張です。
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