Los Angelesの顔
Vo. 87 荒川 龍也 さん
2019-09-07
カリフォルニア州公認心理カウンセラー
Licensed Marriage and Family Therapist
◆カウンセラーになろうと思ったきっかけは、何だったのでしょうか。
私は小学校4年生の時にいじめられていました。それと、小4、5、6年の時に、仲の良かった友達が、毎年、引っ越してしまって、次第にふさぎ込むようになりました。そして反抗的な態度もひどくなっていきました。
中学校2年生では、いじめの影響もあって一部のクラスを登校拒否していました。16歳になると、高校を3か月で辞めてしまいました。
希望もなく、未来も見えない真っ暗闇の中で、どうすればいいのかわからない状態が続いて、毎日イライラして…親には大変迷惑をかけました。
「何とかしたい」という気持ちは強くて、自分で心理カウンセラーを探し歩きました。小さい頃からお世話になっていた小児科医の先生に心理カウンセラーを紹介してもらいました。その時、初めて、心理カウンセリングとは何かを知りました。
18歳で定時制高校に通い始めて、近所にあったシニア・デイ・サービスセンターでボランティアをさせていただくようになりました。この2年間で、話を聞くことの大事さを学びました。
高校の卒業時に1年生の学生たちから「あの時、荒川さんが話を聞いてくれたから、私はまた学校を辞めなくてすんだ」と言われました。
定時制では最初の1年以内で辞めてしまう学生たちが大勢いたので、話を聞くことの力を学びました。この時から心理カウンセラーを目指すようになりました。
◆なぜ、アメリカで、心理カウンセラーを目指したのでしょうか。
もともと英語が話せるようになりたかったのと、アメリカのほうが心理学が進んでいると聞いていたことも理由の一つですが、それ以上に一番背中を押してくれたのは、中京大学大学院で臨床心理士を育てていた教授のお陰でした。
飛び込みで「アメリカか日本、どちらで心理カウンセラーになるべきか」という質問をしたところ、「心理学の分野において、日本はアメリカより100年遅れている。アメリカに行けるのならアメリカに行って学んだ方がいい」とアドバイスをくださいました。
このお言葉で確固たる決意と覚悟ができました。
◆アメリカの州公認心理カウンセラーは、日本のいわゆる“カウンセラー”とは全く異なるそうですが、その違いを教えてください。
日本では、誰でも“心理カウンセラー”と名乗れてしまう悲惨な現状です。私が渡米した15年前もそうでしたし、現在も残念ながら状況は同じです。
日本では、通信講座を取るだけでも心理カウンセラーになれてしまいます。また民間企業などが出す資格もあり、簡単に資格を取得できるので、心理カウンセラーの資格も乱立しています。
その結果、知識と経験に乏しい“心理カウンセラー”がネット上で間違った発言をして、悪影響を及ぼしてしまった事例を、幾度も見てきました。
一方、アメリカの心理カウンセラーの場合は違います。大学院卒業が必須で、その後3000時間のインターン経験が必要で、国家試験を二つも合格して、初めて資格を得ることができます。資格取得後も講習を受け続けて、絶えず勉強しなくてはいけません。さらに、間違ったことや法に触れるようなことをした場合、資格を剥奪される可能性もあります。
このように、資格を取得するまでのプロセスと、その後の管理が日米の大きな違いです。
◆これまでで、どのような悩みを抱えているクライアントが多いでしょうか。
私は子どもと不安・うつ病の専門の心理カウンセラーなので、お問い合わせいただくのは基本的にお子様の心の問題でお悩みの親御さんや、不安やパニック障害、またそれに伴ったうつ病で悩まれている方からが多いです。
私は、日本の愛知県にある発達障害・精神障害を患った子どもに支援を提供する放課後・デイサービスセンターのアドバイザーを務めさせていただいているので、日本の家族の方々の悩みにも接します。
日本で暮らす家族とアメリカで暮らす日本出身の家族に共通していることは、親御さんがしつけ方法に非常に迷われています。
しつけが厳しくなりすぎたり、逆に甘やかしすぎたり、バランスのとり方に問題を抱えています。このしつけのバランスが取れていないと、結果として、子どもの心の問題を引き起こしてしまうことが多いです。そこで、バランスの取れた子育ての仕方をお教えしています。
◆「EMDR」という治療法を採用していますが、どんな治療でしょうか。またどのような効果がありますか。
「EMDR」はEye Movement Desensitization and Reprocessingの略で、日本語では、眼球運動による脱感作と再処理法と言われています。
眼球運動を作為的に行うことによって、脳に直接働きかける治療方法です。主にトラウマで苦しむ方に効果があります。一例ですが、人によっては犬が怖かったのに、EMDR治療を受けた後は、犬が好きになったという人もいます。
◆気分転換にしていることは何でしょうか。
私の気分転換は、家族で出かけること、3歳の息子と遊ぶことです。
他には、自転車や水泳が趣味です。将棋もしますが、最近は日曜日も仕事のため同好会に行けていないのが現状です。あとは、漫画・アニメ・映画鑑賞などです。
◆良い影響を受けた人はどなたですか。
まずは両親です。厳しく育てられましたが、今思えば、その全てから生きるために必要な武器を与えられていたように思います。
また、16歳の時に私を助けてくれた心理カウンセラーには今でも感謝の気持ちでいっぱいです。
◆心理カウンセラーとして心がけていることは何でしょうか。
私から見ると、日本のメディアを通して、心の病についての間違った情報が発信され続けています。
この結果、日本人の方は心の病に関して、カウンセリングに関して、正しい知識を持っていない方がとても多いです。
そこで、私は、クライアントさんに、カウンセリングとは何か、不安障害やうつ病などの心の病は、どういうものなのかなどを、懇切丁寧に説明しています。
また、カウンセリングという治療をする上で一番重要なのは、クライアントさんとの信頼関係なので、クライアントさんに信頼していただけるために、出来るだけのことをさせていただいています。
◆心理カウンセラーをする中で、学んだことや、気がついたことはありますか。
人の素晴らしさ、人生の素晴らしさ、人間の強さです。
私は職業柄、人生のどん底にいる方たちを多く診てきました。そんな中で、涙を流しながら、這いつくばりながら、時に諦めそうになりながらも、非常に薄い、しかし、強い一筋の光を目指して頑張っていくクライアントさんたちや、カウンセリングを卒業する時にはまるで別人のように成長されているクライアントさんたちを見て、感動せずにはいられないセッションを今まで多く経験してきました。
オフィス: 2790 Skypark Dr. Suite 102, orrance CA 90505
電話:424-254-8823
ウェブサイト:japanlatorrancecounseling.com
ブログ:https://ameblo.jp/arakawa-counselor/
Instagram: @tatsuya_arakawa_lmft
荒川龍也さんプロフィール
カリフォルニア州公認心理カウンセラー。富山生まれ、名古屋育ち。10代でいじめや教師からの体罰に苦しみ、精神的な病を患い、16歳で高校中退。2年間のカウンセリングの結果、定時制高校に入学。その後、心理カウンセラーを目指して渡米。カリフォルニア州立フラトン校大学院カウンセリング専攻卒業。子どもとその家族、重度の精神障害者とその家族、薬物中毒のクライアント等、多岐にわたり経験を積む。現在はTorranceで開業し、カウンセリングを提供。専門は、子どもとその家族、不安とうつ病。
※コラムの内容はコラムニストの個人の意見・主張です。