キム・ホンソンの三味一体
vol.123 キリストについて教えてくれている仏教映画
2019-11-08
今度、私達の教会で映画上映会を行います。現代プロ、山田火砂子監督による「望郷の鐘 − 満蒙開拓団の落日」という作品です。第二次世界大戦前、日本政府の政策によって27万人という農村民が満州に移民しました。義勇軍という名前で渡った中学男子たちを含めると37万人です。敗戦直前、関東軍に見捨てられた彼らは、ロシア軍の侵攻によって男は捕虜としてシベリアへ送られ、女子供の半数以上は死んだそうです。この映画は、山本慈昭(長岳寺住職)が、残留孤児の救出に生涯をかけるという歴史的事実に基づいた感動物語です。
近頃私は、行く所々にこの映画のチラシを持って行っては映画の宣伝をしているのですが、先日ある一人のクリスチャンの方から「先生は牧師なのに何でこんな映画を宣伝しておられるのですか?そもそも教会でこんな映画を上映しても良いのですか?」と質問されました。最初は何でこのようなすばらしい映画に対してそんなことをおっしゃっているのかがよく理解出来ませんでしたが、しばらくお話しを聞いていましたら、その方のダメだとする理由が、この映画の主人公がお寺の僧侶だということだということに気づきました。
その方には申し訳ないのですが、その考えは実は全くキリスト教的ではないと思いました。むしろユダヤ教的な考えだと思います。イエスキリストは、当時の宗教的指導者達が罪人だと烙印を押して虐げていた人々、特に他宗教を持つ異邦人をはじめ、罪人と呼ばれ社会の中で隅に追いやられていた人々と共に食事をし、彼らを友として受け入れ憐れみました。そして、そのことが結局は、反乱を企て民衆を煽動したという罪名となり政治犯として十字架にかけられたのであります。聖書が記すところのキリストは、満州の開拓団の人々と共に苦しみ彼らを憐れむキリストであり、山本慈昭住職と共に残留孤児のために心砕いて彼らを救い出す方です。
明日は、いつも社会的弱者のサポートのために協力し合っているガーデナ仏教会のI先生のところに映画のチラシを持って行こうと考えています。この映画を通して、クリスチャンと仏教徒とが、それぞれの信仰が示すところの平和を再確認し、共に歩むことができるように祈っています。
「望郷の鐘 − 満蒙開拓団の落日」
11月15日(金)、5:30pm 開場、6pm スタート、入場料 $15
聖霊の実ルーテル教会、2706 W 182nd St Torrance, CA 90504
mh.gendaipuro@gmail.com (310) 378-3558
※コラムの内容はコラムニストの個人の意見・主張です。