編集部
【緊急連載】新型コロナウイルスについて vol. 5
2020-03-18
【注意】こちらの記事は、米国のCDCや公衆衛生局などの情報を基にしております。情報は流動的ですので、最新情報を関係サイトよりご確認ください。
UCLA Hematology Oncology Clinicのナースプラクティショナー、広藤えりさん(RN, MSN, ACNP-BC)に、ウイルスと細菌との違いを教えてもらいます。
Q5 現在、世界中で流行っている新型コロナウイルスは、ウイルスが原因ですが、ウイルスと細菌は違うのでしょうか?
A5 ウイルスと細菌は、その構造が全く違います。
ウイルスも細菌も人体に入り、増殖することで感染症が発症します。感染症には、風邪やインフルエンザなどの症状の軽いものから、結核や敗血症など重いものまで、さまざまな種類があります。
ウィルスと細菌は、人間に感染症を引きおこす病原体ですが、二つの構造は全く違います。大きさ、構造、増殖能力の有無など、さまざまな観点から相違点を見ることができます。
生物か?
特に大きな違いは、ウィルスは生物とはいいきれません(*研究者の中でも意見は分かれます)。一方、細菌は生物です。
ウイルスは細胞がなく、自分で栄養を摂取したり、エネルギーを生産したりすることはなく、自力で増殖することができません。ウイルスは、DNA(デオキシリボ核酸)かRNA(リボ核酸)のどちらかしか持っていません。
では、自力で増殖することができないウイルスは、一体、どうやって増殖するのでしょうか? それは、ウイルスは、動植物の細胞に入り込み、その細胞の機能を使って増殖していきます。
一方、細菌は細胞を持ち、栄養を摂取してエネルギーを生産します。自ら細胞分裂をおこして生存し、増殖しします。そして、DNAとRNAの両方を持っています。
大きさ
ウイルスも細菌も、肉眼では見ることができません。ウイルスは細菌よりもさらに小さく、単純な構造をしており、電子顕微鏡で、その構造を観察することができます。
細菌はウイルスよりも大きいので、光学顕微鏡で見ることができます。
感染症
ウイルスが原因となる代表的な感染症は、風邪、インフルエンザ、麻疹、風疹、おたふくかぜ、水疱瘡、ウイルス性肝炎、HIVなどがあります。そして、現在蔓延しているコロナウイルスもウイルス性感染症です。
ウイルスが人体に入ると、リンパ球、特に細胞障害性Tリンパ球が感染を防ぐ役割をしています。
代表的な細菌性感染症には、結核、百日咳、梅毒、ジフテリア、マイコプラズマ肺炎、溶連菌感染症などがあげられます。しかし、個人の免疫力や感染する臓器によっては、感染症を引き起こす可能性のある細菌でも症状を引き起こさないこともあります。
人体の中に細菌が入ると、白血球の好中球という細胞が主体となって、感染を防御します。
治療薬
ウイルス性感染症には治療薬が少なく、薬で対応できるウイルスは限定されます。タミフルや抗ヘルペスウイルスなどがその例です。
ウイルスは細胞膜がなく、人の細胞に寄生しているため、治療薬は限定されてしまうのです。一部のウイルスには、ワクチンによる予防接種ができます。
細菌性感染症であれば、細菌の細胞に作用して増殖を抑制する抗菌薬(抗生物質)が治療に使用されます。
*This article is not associated with any business and does not constitute endorsement or recommendation by UCLA healthcare system*
◆広藤えりさん(RN, MSN, ACNP-BC)プロフィール
米国看護師として病練勤務を約10年。2015年にUCLA看護大学院卒業。その後、ナースプラクティショナーとして医療に従事している。
※コラムの内容はコラムニストの個人の意見・主張です。