キム・ホンソンの三味一体
vol.135 人類の存続のために必要なもう一つのこと
2020-06-11
数年前に所属している教区が主催するセミナーで非常にユニークな牧師の方にお会いしました。私の名札をみて韓国系だと分かったのか、一人の白人のご夫人が韓国語で挨拶をして来られました。彼女は、韓国語の挨拶の他にも韓国語で子守唄が歌えるし、韓国の童謡もいくつか知っていると恥ずかしそうに言われました。彼女は32年前に、その時3歳だった娘を韓国からアダプトしたそうです。けれども、アメリカに着いて3日が経っても、何も食べようとしないで「オンマ、オンマ(ママ)」と実の母親を求めて泣いている娘を抱きしめて、彼女も一緒になって泣いたそうです。
その後、なんとかしなければと思った彼女は、娘を車に乗せてコリア−タウンに行き、なり振りかまわず通行人達をつかまえて、どこに行けば韓国の食べ物が買えるのか、と聞き回った時の思い出を語ってくれました。彼女はまた、娘のために知人の知人に頼んで韓国の子守唄や童謡のカセットテープを手に入れて、繰り返し練習し、娘に子守唄を歌って寝かしつけられるまでになったそうです。今ではその娘さんは立派なお医者さんになって、お孫さんが2人もいるそうです。
さらに、彼女は、娘をアダプトしてから2年後に、カンボジアから男の子をアダプトしたそうです。そして、その息子に先天的な障害があることに気づいたのは、アダプトしてまだ1年も経たない時だったそうです。「二人とも私の大事な子供達です。息子にも同じようにカンボジア語で子守唄を歌ってあげましたよ。」と優しそうな顔で話してくれました。30年以上経った今も、彼女は障害をもつ息子さんを世話しています。
彼女に会って、人を愛するということは、互いの持つ違いを違いとせず、自分のハートを与えるようにして相手を受け入れることだ、と教えられた気がします。そして、このことこそ、今の私達の社会に最も欠けているものではないかと思いました。
ジョージ・フロイドさんの死は、黒人差別の現状と黒人の地位向上の必要性だけを教えてくれるものではありません。あらゆる「違い」に対するフォビアを克服し、違いを超えて相手を受け入れ友となることは、地球温暖化防止に引けを取らないくらい人類の存続にとって必要不可欠なことではないでしょうか。
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※コラムの内容はコラムニストの個人の意見・主張です。