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コラム

来夏の映画観ようよ♪
vol.64 日本のいちばん長い日(1967)

2020-08-20


 機会があり、北海道・稚内へ行った。快晴なら樺太―現在、実質ロシア領サハリンが見える宗谷岬があり、そして、街を一望出来る丘に『九人の乙女の像』という碑がある。太平洋戦争中にソ連が侵攻してきたため、止む無く自決した電話交換手の女性達を慰霊するものだ。しかし、事件についての説明文の日付は「昭和二十年(1945)、八月二十日」。日本は八月十五日に終戦を迎えていたのに、なぜ? 
 
 ミッドウェー海戦を境に日本の戦況が悪化する中、同盟を結んでいたイタリア、ドイツが相次いで連合国に降伏。昭和二十年の七月二十六日に、イギリス、アメリカ、中国(後にソ連が加わる)から日本はポツダム宣言=無条件降伏を迫られる。勝算が無いのは目に見えていたが、陸軍が本土決戦を大前提に考えていたため意見が割れ、その間に広島、長崎に原子爆弾が落とされてしまう。遂に八月十四日、ポツダム宣言を受諾、翌日には天皇陛下の御言葉で全国民へ終戦を伝えるラジオ放送が流れる予定だったが…。
 
 そもそも終戦に至る詳細な経緯を知らないから観てみよう、と思った本作。もう終わりにしようという空気の中、陸軍が「あと二千万人、日本の男子の半数を特攻に出せば勝てます!」と発言したシーンは、まさにクレイジー!戦争は狂気というのはこのことか、と思わされた。ただ、降伏に反対の彼らにも言い分があり、こんな終わり方では今までの戦闘で亡くなった三百万人に申し訳がない、と責任を感じているのだが、いかに戦時中の集団心理が怖いかが身に染みた。
 
 また、白黒映像やナレーションが当時の「大本営発表」のようでリアリティが強く、実際に戦争を経験した年代の俳優陣の鬼気迫る演技はもちろん、まるであの日、あの場に居合わせたような錯覚に陥るほどの臨場感だった。
 
 終戦直前に、下手をすれば日本の歴史が変わっていたかも知れない危機一髪の大事件があったこと、そして、終戦後にも冒頭の九人の女性達のような犠牲者がいた事も忘れてはならない、と心から思った。


※コラムの内容はコラムニストの個人の意見・主張です。
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加西来夏

職業:旅する映画ラヴァー。映画の聖地であり、年中カラっとした最高の気候…世界中を旅しているけど、やっぱりL.A.が大好きです。年間視聴映画100本以上、訪問39ヵ国~。好きな言葉は“世界は驚きと奇跡に満ちている”。ご意見はkasai.laika@gmail.comまで




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