キム・ホンソンの三味一体
vol.139 本当の満足
2020-08-27
聖書の中には、パン五つと魚2匹を5千人の人々が食べて満腹したという信じられない話が書かれています。イエスに会うために5千人の群衆が人里離れたところにまで集まってきました。夕方となり弟子達は人々が各自に村へと食べ物を買いに行けるように群衆を解散させてほしいとイエスに言いました。すると、イエスはあなた方が人々に食べ物を与えなさいと答えます。その時、イエス一行には自分達が何とか飢えをしのげる程度の食料しかなかったのです。「ここにはパン五つと魚2匹しかありません」という弟子達に対してイエスは「それをここに持って来なさい」と命じます。イエスの手によって弟子へと渡され人々へと運ばれるパンと魚は、すべての人々が食べて満足するまで続きました。
私たちは5千人に対してのパン五つと魚2匹という数字にのみ焦点を当ててこれを奇跡だと驚くのですが、実はもう一つの驚くポイントがあります。それは「大多数の人が」とか、「多くの人が」でもなしに、「全ての人が」食べて満足したと書かれていることです。与えられた物にけして満足できないのが私たちの性です。皆に行き渡るだけの十分な物があって、それを秤にかけてどれだけ正確に分けたとしても、大概、文句を言う者が必ず出て来ます。
世界の富の82%を、世界人口の1%にあたる富裕層が独占している一方で、世界人口の半分を占める貧しい人々、37億人が手にしている富の割合は、わずか1%未満だと言われています。富む者は、もっともっと手に入れたいが故に不満足であり、貧しい人々は生きるために必要な食料すら手に入らないが故に満足出来ないでいる、これが私たちの現実です。
弟子達はイエスと自分達のために食料を取っておきたいと思っていました。自分達を守るための当然の判断であり、常識です。しかし、イエスはそれを人々に与えるべく「持って来なさい」と言います。自分達のために確保した物によって、人はけして満足しないことをイエスは教えています。
コロナ以来、トイレットペーパーや食料の買い占めから始まり、最近では、国家単位で始まった近い将来に完成するだろうワクチンの買い占めに至るまで、安心と満足を得るための人類の獲得戦が続いています。僅かな物であっても、与えて分け合うことによってこそ得られる本当に満足があることを、パン五つと魚2匹を通して思い起こす今日この頃です。
毎週日曜日の3pmからズームでの礼拝があります。ご興味のある方は是非メールでお申し込みください。 khs1126@gmail.com
※コラムの内容はコラムニストの個人の意見・主張です。